【2月26日 AFP】デオンテイ・ワイルダー(Deontay Wilder、米国)とのタイトルマッチに勝利し、ボクシングWBC世界ヘビー級の新王者に輝いたタイソン・フューリー(Tyson Fury、英国)が、米ホワイトハウス(White House)とバチカン(ローマ教皇庁)から招待を受けていることが分かった。しかし本人は、いとしの「キャラバン(キャンピングカー)」に戻る日の方を待ち望んでいるようだ。

 フューリーは22日のタイトルマッチでワイルダーに圧勝し、複雑なキャラクターというイメージからの脱却にまた一歩前進した。プロモーターのフランク・ウォーレン(Frank Warren)氏は、ホワイトハウスやバチカンに招待されたことは、フューリーのたどってきた道のりが飛び抜けたものであることの表れだと話している。

 この数年間で、フューリーは当時最強を誇ったウラディミール・クリチコ(Wladimir Klitschko、ウクライナ)を撃破したところから、アルコールと薬物に溺れて自殺を考えるようになったものの、再起してワイルダーに7回TKO勝ちを収める浮き沈みを経験した。女性や同性愛の人に対する差別的な発言が大きな物議を醸し、批判にさらされたこともあった。

 ウォーレン氏は英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)で、「ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が、フューリーとワイルダーをホワイトハウスに招待している」「WBCにも、教皇からの招待状が来ている。2年の間にまさかこれだけのことが起こるとは。彼のたどってきた道のりは信じられない」「フューリーは人生の逆転劇をつかんだ」と話している。

 さらにウォーレン氏は、フューリーのキャリアはヘビー級史上最高のボクサーと称されるモハメド・アリ(Muhammad Ali)氏の人生にも比肩すると話している。

「フューリーには、スポーツの枠にとどまらない偉人になってほしい」「私にとってモハメド・アリはずっとヒーローだったが、最初は彼を嫌う人もいた。成り上がりの黒人ということで疎まれていた」「それでも平和と団結のチャンピオンになった」

「フューリーは非常に理路整然とした思慮深い人間だ。おちゃらけた部分もあるが、深く考えるタイプでもある。そうした人となりも称賛すべきだ」「彼はアリをはじめとする名ボクサーと同じ高みにいる。彼らと同じ位置にいると思っている」

 それでも、ワイルダー戦で3000万ポンド(約43億円)を懐に収めたと伝えられるフューリー本人は、夫人と5人の子どもが待つ家へ帰るという、控えめな予定を口にしている。

 フューリーはデーリー・テレグラフに対して「まずは少し休むつもりだ」と話した。

「家へ戻ってまたキャラバンを出すよ。全国をまわるかもしれない。昔のような放浪の炎を燃やし、そのまわりを子どもたちが走りまわる。それ以上の自由は思いつかない」

「いろいろと野心的で壮大なプランを持つ人もいるだろうが、俺にとっては何もない場所にキャラバンを止めて、寝っ転がりながら川のせせらぎや、炎のはぜる音に耳を澄ませる解放感に勝るものはない」

「そうした感覚がある。そういうふうに生まれついたんだ。城に住んでいようが、俺なら毎日キャラバンで寝る方を選ぶね」 (c)AFP