Q:地球が自発的に寒冷化から温暖化に転換することはあるのか?

A:私たちは、地球システムが正味の寒冷期モードにあるこという事実を謙虚に受け止め、尊重すべきだ。人間は化石燃料の燃焼による熱という荷を地球に負わせ続けている。これまでのところ地球システムは、この熱を抑えることで対処している。

 第一に、排出される温室効果ガスの50%が陸地と海洋により吸収されている。これは最大の経済的補助だ。第二に、人間が生成する過剰熱量の80%が海洋に吸収される。第三に、氷床と極氷冠によって太陽熱放射の90%が宇宙空間に反射される。

 すなわち、地球には炭素隔離、熱吸収、アルベド(雪や氷が鏡のような役割を果たすことで太陽のエネルギーが宇宙空間に反射される作用)という三つの主要な冷却作用因子がある。これによって地球システムは(過去1万2000年間の)完新世間氷期に、これほどの回復力があるシステムを維持することができた。私は虐待を和らげるこの地球の能力を「地球のレジリエンス」と呼んでいる。

 地球がもはや対処できなくなり、自発的に寒冷化から正味の温暖化に変化することは悪夢だ。このポイントがどこにあるのかはまだ分からないが、仕組みは分かっている。

 例えばグリーンランド(Greenland)の氷床が、表面に液体の被膜が形成されるほどの広範囲にわたって融解することはそのポイントだといえる。氷床が熱の正味の反射体ではなく、熱の正味の吸収体となっていることは既に確認されている。一度に数週間以上この現象が続くことはないが、既に発生し始めてはいる。

 地球システムが正味の寒冷化から温暖化に切り替わるポイントは、人類が臨界点を超えた時だ。地球の回復力が弱まりすぎると、気候システムが人間による妨害の影響をもはや緩和せず、むしろ増大させるような状況に陥る可能性がある。

 この段階に至ると、私たちはコントロールを失う。

Q:気候変動に対処する時間は10年しか残されていないとよく言われるが、これはどういう意味か?

A:気候変動に関しては重要となるタイムスケールが二つあることを、人々に教育し始めなければならない。

 その一つは、作動のタイムスケールだ。私たちが不可逆的な「スイッチ」を押してしまうと、氷床や永久凍土が融解し、南米のアマゾン(Amazon)熱帯雨林がサバンナになるといった不可逆的な変化が生じる。もう一つは何世紀にもわたり展開し、全面的な影響を及ぼすタイムスケールだ。

 私たちは、前者を回避しなければならない。地球温暖化を暴走させる「スイッチ」を押したくはない。これからの10年が、このような状況を回避するために人類に残された時間だといえる。(c)AFP/Marlowe HOOD