■社会的圧力から子どもを産まない韓国女性たち

 韓国は、朝鮮戦争の惨禍から復興を遂げて世界12位の経済大国に成長したが、伝統的な社会的価値観がいまだに幅を利かせている。男女の賃金格差は先進国の中で最も大きく、女性の平均賃金は男性の約3分の2となっている。さらに、働きながら子どもを育てている女性たちは、子育てと仕事の両方に秀でていなければならないというプレッシャーも受ける。

 多くの女性は、職場では昇進を阻む壁にぶち当たり、一方で育児という大きな負担も抱えるため、しっかりとした教育を受けながらもキャリアを断念することを強いられてしまう。

 こうした社会的な圧力に直面し、多くの女性が子どもを産まない選択を下す。韓国の合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に産む子どもの数)は2018年に0.98に低下。人口を維持するために必要な水準値2.1を大幅に下回った。

 この傾向は、2003年にテレビ業界で働き始め、現在、6歳の息子を持つイ氏にとってはあまりに身近だ。

「キャリアを断念したベテランの女性ジャーナリストを大勢見てきた」とイ氏は言う。

「そのことに失望させられるだけではなく、悔しいという気持ちにもなった」

 そして自身も、1年間の産休から職場に復帰した際に困難にぶつかったと語り、「母親としてもジャーナリストとしても自分が中途半端に思えた」と当時を振り返る。

 そのような時に職場のある女性の先輩から「自分にあまり厳しくしない方がいい」と電話でアドバイスをもらったことに触れたイ氏は、「若い女性たちには仕事でベストを尽くしてほしいけど、自らの力が及ばないことで自分を責めないでほしい」と続けた。(c)AFP/Kang Jin-kyu