【2月29日 AFP】韓国放送公社(KBS)のゴールデンタイムに放送されるニュース番組の本番を控えたスタジオでは、まばゆいライトの中でイ・ソジョン(Lee So-jeong)氏(43)がテレビ用プロンプターの原稿を下読みしながらリハーサルを行っていた──。

 イ氏は「ニュース9(News 9)」の顔として、週5回、全国のお茶の間にニュースを届けている。韓国社会はテクノロジーの面でも経済的にも発展を遂げたが、文化的にはいまだに男性優位で、テレビ業界も長年、男性中心の組織構造が当たり前だった。そのような中、初の女性キャスターとしてイ氏が抜てきされた。

 韓国のテレビのニュース番組は旧態依然とした構成で、真面目そうな年配の男性キャスターがその日の主なニュースを伝え、若い女性のアシスタントが番組後半で軽めのニュースを担当する。イ氏の後輩たちの中には、仕事を諦め、財閥企業を所有する富豪一族の元に嫁いだ女性たちもいる。

 しかし、イ氏がKBSのキャスターに選ばれたことで逆転現象も起きた。若い男性アシスタントも付いた。

 かつての女性アナウンサーは「見た目の美しさ」だけを求められる存在だった、とイ氏はAFPに語った。だが、イ氏には大きな目標があった。KBSの保守的なスタイルを変え、若い視聴者を獲得するという目標だ。若い視聴者は、「視聴者に講義する」スタイルを取ることが多いニュース番組にうんざりしていたというのだ。

「ニュース9」は現在、ニュース番組としては国内で最も人気があり、イ氏がキャスターを務めるようになった昨年11月以降、視聴率は9.6%から11%に上昇した。

 だが、「草分け」であるが故のプレッシャーはあるといい、不公平ではあるが、自らにはたった一つのミスも許されないことを認識していると話す。「私が失敗したら、他の女性記者たち全員がおとしめられることになるかもしれない」

 そして「他の女性たちがもっとチャンスをつかめるよう、私がうまくやらないと」と述べ、「そうした責任と重圧は、ゴールデンタイムのニュースの生放送よりもとても大きい」と付け加えた。