【2月25日 AFP】北極圏にあるノルウェー領スバルバル諸島(Svalbard Islands)に設置された世界最大の種子貯蔵庫で、現代の「ノアの箱舟(Noah's Ark)」とも呼ばれるスバルバル世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)は25日、「世界の破滅」並みの大惨事に備えるため、世界各地から提供される種子6万種をさらに受け入れる予定だ。

 クロップトラスト(Crop Trust)が管理するスバルバル世界種子貯蔵庫は、北極から約1000キロ離れたスバルバル諸島スピッツベルゲン(Spitsbergen)島のロングイェールビーン(Longyearbyen)近くの山中に位置する。

 クロップトラストの理事、シュテファン・シュミッツ(Stefan Schmitz)氏は「気候変動が加速し、種の多様性がますます失われる中、絶滅の危機にある食用作物を救う取り組みをさらに急ぐ必要がある」と述べる。

 保管されている種子同様、種子を提供している国もブラジル、米国、ドイツ、モロッコ、マリ、イスラエル、モンゴルとさまざまだ。今回提供される種子が加わると、貯蔵される種子は合わせて約105万種に上る。

 スバルバル世界種子貯蔵庫はノルウェーによる出資で2008年に開設され、地球上に存在すると考えられている作物品種の2倍に相当する最大450万種を貯蔵することができる。貯蔵庫に種子を預けている国や機関はその種子に対する所有権を保持し、必要なときに回収することができる。

 この種子バンクの有効性は、シリア内戦で注目された。研究者らは2015年、同国の都市アレッポ(Aleppo)の壊滅により失われた穀物の予備を、貯蔵庫から回収することができた。

 だが皮肉なことに、この貯蔵庫自体が気候変動の影響を受けてしまった。2016年、北極圏の気温が異常に上昇し、永久凍土が融解したため、貯蔵庫のトンネルの入り口に水が浸入した。

 以降、ノルウェー政府は資金を投じ、温暖化や湿潤化のさらなる影響から貯蔵庫を守る対策を講じている。研究者らによると、北極圏では他の地域の2倍の速さで温暖化が進行している。(c)AFP