【2月25日 AFP】致死性ウイルスや水痘、さらには集団下痢症──高齢者が豪華な休暇を楽しむものと考えられているクルーズ船の旅だが、時にそれは利用者の期待を裏切るものとなり得る。

 クルーズ船の環境について、英ロンドン大学クイーンメアリー校(Queen Mary University of London)のウイルス学の教授、ジョン・オックスフォード(John Oxford)氏は、「こうした船では一般的な風邪やウイルス性胃腸炎などの集団感染が非常に発生しやすい」「船上は常に過密状態で、多くの乗客がいるため、衛生基準が悪化する恐れがある」と指摘する。

 米疾病対策センター(CDC)によると、昨年はクルーズ船上で8件のノロウイルスの集団感染が発生している。近年確認されているものには、はしか、大腸菌感染症、水痘、サルモネラ食中毒などがある。

 英レディング大学(University of Reading)のサイモン・クラーク(Simon Clarke)准教授も、「不幸なことに典型的なクルーズ船は高齢者が多く、深刻な健康被害が懸念される感染症が発生しやすい」と述べる。

 横浜に停泊するダイヤモンド・プリンセスでの新型コロナウイルスの感染者数は、中国の発生地に次いで多い。これに関しては、数多くの乗客を14日間隔離した日本政府の対応に非難の声も上がっている。

 他方で米当局は、新型コロナウイルスによる移動制限や隔離措置のリスクを理由に、アジア行きまたはアジア域内を航行するクルーズ船の利用を「考え直す」よう旅行者に勧めている。

■見当はずれ

 一方、クルーズ業界専門家の第一人者であるスチュワート・シロン(Stewart Chiron)氏は、クルーズ船は言われているほどウイルスの温床ではないとし、「船を清潔に保つために広範な予防措置が取られている」と指摘する。

 米を拠点とするシロン氏は、数千人の人が船上でひしめき合っているというイメージは見当はずれだとも述べる。「クルーズ船は普通の人が思っているよりも大きい。乗客が健康的で楽しい時間を過ごすことのできる十分なスペースがある」