【3月15日 AFP】アフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶ115の島からなるセーシェル。国内総生産(GDP)の6割以上を観光収入が占め、世界銀行(World Bank)が「高所得」と見なすアフリカ唯一の国だ。だが、壊れやすい生態系を保護しながら、経済成長を維持する方法をめぐって模索が続いている。

 2008年の経済危機後、主に欧州から訪れる富裕層の旅行が、セーシェルを金融破滅の危機から救った。観光客数はその後10年間でほぼ倍増し、2018年には約36万人(同国の人口のほぼ4倍に相当)が同国を訪れた。

 政府は2015年、環境保護と地元小規模ホテルの活性化を目的に、三つの主要な島、マヘ(Mahe)島、プララン(Praslin)島、ラディーグ(La Digue)島での大規模リゾート開発を一時中断した。

 セーシェル諸島では、ほぼ半分にあたる455平方キロメートルが環境保護区となっている。また、ココ・デ・メールと呼ばれるヤシが自生するバレドメ(Vallée de Mai)自然保護区と、アルダブラゾウガメの生息地としても有名なアルダブラ環礁(Aldabra Atoll)が、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)に登録されている。

 マヘ島で人気のボーバロン・ビーチ(Beau Vallon Beach)や、世界で最も美しいビーチの一つに数えられるラディーグ島のアンススルスダルジャン(Anse Source d'Argent)などを除き、島々の大部分は静けさを保っている。

 マヘ島南部のグランドポリス(Grand Police)では、2015年以前に承認された湾岸諸国企業の大規模リゾート開発計画に、地元住民が憤慨している。このプロジェクトは地元の湿地の保全に対する懸念から不評を買っているが、ほとんどの大規模リゾートを外国のグループ企業が所有していることも、住民の不満に拍車をかけている。政府は企業側と建設を取りやめについて協議すると約束した。

 ディディエ・ドッグリー(Didier Dogley)環境相は、環境問題に対する公約や取り組みはあるものの、持続可能な観光産業のために、まだ多くのことをしなければならないと話す。

 大規模ホテルグループは、独自の菜園を作り、プラスチックやエネルギーの使用を削減するなど、環境への負荷を減らす措置を講じている。

 一方、小規模なセーシェル人所有の施設は、大規模施設ほど環境に負荷は与えていないものの、政府のインセンティブにもかかわらず、これらの取り組みにおいてリソースが不足していることも多い。

 環境NGO、ネイチャー・セーシェル(Nature Seychelles)のエグゼクティブ・ディレクター、ニルマル・シャー(Nirmal Shah)氏は「少ない人口に比べると観光客の数は膨大で、こんなに多くの観光客の残す環境負荷を吸収することは困難だ」と語った。(c)AFP/Nicolas DELAUNAY