【2月24日 AFP】ペルーはこのほど、インカ帝国の指導者らの回顧録などを含む貴重な写本を公開した。この写本はチリ、ペルー、ボリビアが争った1879~84年の太平洋戦争(Pacific War)中に行方不明になっていた。

Memories of the Peruvian monarchy or outline of the Inca's history(ペルーの帝国の回顧録またはインカ帝国の歴史の概要)」の写本は、インカ帝国の皇帝ワイナ・カパック(Huayna Capac、1493~1525年)の子孫であるフスト・アプ・サウアラウラ・インカ(Justo Apu Sahuaraura Inca、1775~1853年)によって1838年に書かれたもの。

 ペルーの首都リマにある国立図書館の蔵書保護部門長であるヘラルド・トリージョ(Gerardo Trillo)氏はAFPに対し、「この文章の価値は計り知れない」と述べている。

 インカ帝国の首都だったクスコの先住民の貴族階級に属していたサウアラウラは、自らを「インカ皇帝最後の子孫」と呼び、インカ帝国の歴史の保護に力を注いでいた。

 写本は、今では消滅してしまった文章も参考にしながら、スペインによる征服前までのインカ帝国の歴史をたどっている。写本にはスペイン人を父に、インカの貴族を母に持ち、アメリカ大陸初の混血とされるインカ・ガルシラーソ・デ・ラ・ベーガ(Inca Garcilaso de la Vega)に関する記述や、スペインによるクスコ征服の記録、インカの年表などが含まれている。

 トリージョ氏によると写本は太平洋戦争中にリマを占領したチリによって、ペルーの国立図書館から盗まれたという。チリは、占領中に同図書館から持ち出した書籍4500冊以上を返却している。

 だが、この写本は1970年代にブラジルの個人収集家の手に渡っていた。10年に及ぶ交渉の末、この個人収集家は昨年11月、正当な所有者に返却することに合意したという。

 返却後はデジタル化され、オンラインで閲覧できるようになっている。(c)AFP