【2月23日 AFP】フィリピンは22日、新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス(Diamond Princess)」に乗船中のフィリピン人乗員ら数百人について、予定していた退避措置を延期した。船内から出られずにいる乗員の家族が不安を募らせている。

 乗客数百人は下船したものの、船内には1000人以上の乗員が残されている。うち400人超がフィリピン人で、同国当局は22日、23日に予定していた帰国が日本側の許可が下りるまで延期されると発表した。

 フィリピン外務省の関係者は22日、乗船中のフィリピン人49人から新型コロナウイルスの陽性反応が出たと発表。うち2人は治療が奏功し、退院したという。

 娘がダイヤモンド・プリンセスの保安警備スタッフであるノーマ・ファハルド(Norma Fajardo)さんは、乗員は適切な治療やケアを受けているが、保安警備の仕事が非常にウイルスに感染しやすいとAFPにコメント。「娘は警備の仕事をしており乗客の様子をチェックしなければならず、わたしたちにはどうすることもできない」「娘はいつ感染してもおかしくない」と不安を語った。

 ファハルドさんによると、体調の悪い乗員は静養を認められるが、症状が出ていない乗員は勤務継続を奨励されていたという。

 ダイヤモンド・プリンセスから香港で下船した乗客1人のウイルス感染が確認された後、同船では今月5日に検疫が開始された。しかし、多くの乗員は仕事を続けなければならず、隔離されていなかった。

 食事を用意する乗員もいれば、客室に食事を届ける乗員もおり、乗員がうかつにも船全体にウイルスを拡散させていたのではないかとの非難の声も上がっている。

 運営会社プリンセス・クルーズ(Princess Cruises)のジャン・シュワルツ(Jan Swartz)社長は、乗員に「深く感謝し、非常に誇りに思っている」との書簡を送った。(c)AFP