【2月23日 AFP】英スコットランドの蒸留所が19日、エンドウ豆を原料とした環境に優しいジンの製造を開始した。5年に及ぶ研究の結果、このジンの製造過程では二酸化炭素(CO2)の吸収量が排出量を上回るという。

 スコットランド北東部沿岸のインバーケイラー(Inverkeilor)にあるアービキー蒸留所(Arbikie Distillery)では、「自然」を意味する「ナーダル(Nadar)」というブランド名のアルコール度数4.5%のスピリットを発売する。蒸留所によると、レモングラスとかんきつ系の葉の香りがする「新鮮で果実のようなアロマ」を持った世界初の飲料だという。

 このジンの開発にあたってはスコットランド・ダンディー(Dundee)市にあるアバーテイ大学(Abertay University)とジェームズ・ハットン研究所(James Hutton Institute)が協力した。カーボンフットプリント(CFP)は700ミリリットル入りのボトル1本当たり -1.54 kg-CO2e だという。

 ジェームズ・ハットン研究所の環境科学グループから加わったアグロエコロジストのピエトロ・アイアネッタ(Pietro Iannetta)氏はAFPの取材に対し、エンドウ豆から造るジンは、小麦から造る伝統的なジンよりも環境フットプリントの値が「かなり低い」と語った。気候変動、水の汚染、大気汚染、化石燃料の消費など環境影響14項目中12項目で豆製のジンの方の評価が高かったという。

 ジンの原料として普通は麦などを使うが、科学者らは蒸留所と協力して、さやを取り除き乾燥させた豆をひいて発酵させた。ジンのカーボンフットプリント削減に貢献したのは主に、蒸留後の残留物を動物の餌にした点だ。

 科学者らは、アルコールの原料としてエンドウ豆が使われるようになれば、南米から大豆を輸入する必要がなくなるかもしれないとしている。南米では飼料用大豆を生産するための開墾で森林破壊に拍車が掛かっている。

 またエンドウ豆などの豆類は、空気中の窒素を固定するという利点もある。窒素は植物の成長に不可欠で、豆類が固定した窒素を肥料として利用すれば、河川や大気、土壌に悪影響を与える合成窒素肥料を使う必要がなくなる。(c)AFP