【2月21日 AFP】在ネパール中国大使館がネパールの英字紙カトマンズ・ポスト(Kathmandu Post)が掲載したコラムを「意図的」で「悪意のある」中傷と批判したことを受けて、カトマンズ・ポストは20日、言論の自由を抑圧しようとしたとして中国政府を非難した。

 在ネパール中国大使館は18日、中国の権威主義的な政治制度が新型コロナウイルスの流行を悪化させたと論じたコラムを掲載したとして、カトマンズ・ポストを激しく批判した。

 これについて同紙は社説で、「中国大使館は掲載された記事に不満を示したばかりか、ポストの編集長の名誉を傷つけ、脅迫的な言葉を用いさえした」と反論。「中国大使館が異議を唱えた際の非外交的であからさまに脅迫的な態度は、非難されるべきだ」と指摘し、中国大使館の行動は「ネパール国民の報道の自由、言論の自由、表現の自由に対する直接的な脅威とみなすことができる」と述べた。

 さらに中国に対し、「危惧を表明することはできる」が、「特に民主主義においてあってはならないのは、記事の撤回を要求した上、外国紙の編集長に事実上の脅迫行為をすることだ」と非難した。

 中国の怒りを買ったのは、「新型コロナウイルス危機、中国の秘密主義で悪化」と題したコラムで、北大西洋条約機構(NATO)の元米国大使であるアイボ・ダールダー(Ivo Daalder)氏が米紙シカゴ・トリビューン(Chicago Tribune)に寄稿し、複数の新聞に配信された。

 カトマンズ・ポストはこのコラムに、100元札に描かれた中国建国の父、毛沢東(Mao Zedong)がマスクを着用しているイラストを添えて掲載した。

 これに対して中国大使館は、同コラムが「中国の政府と人民の努力を意図的に中傷し……中国の政治制度を悪意を持って攻撃した」と指摘。さらにカトマンズ・ポストのアヌップ・カフレ(Anup Kaphle)編集長について、「中国関連の問題について常に偏見を抱いている」「反中勢力の言葉を繰り返すだけのオウム」と批判した。

 その上で「在ネパール中国大使館は、同紙と編集長に堂々と抗議し、さらなる行動の権利を留保する」と述べた。

 中国大使館の声明が特に編集長を狙い撃ちしたことについて、ネパールの新聞やオンラインメディアの編集長18人が19日に声明を発表。「ネパール憲法は報道の自由を全面的に保障しており、われわれはその行使と保護に取り組んでいる」と述べた。(c)AFP