【2月21日 AFP】新型コロナウイルスの集団感染が確認され、横浜港で検疫下に置かれていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス(Diamond Princess)」からは、20日にも250人近い乗客が下船した。

 ただ下船した人々については、新型ウイルス検査で陰性だったとはいえ、人口密度の高さで知られる日本の都市を自由に歩き回れるようになってよいものかと、疑問視する声が徐々に強まっている。

 感染症対策を専門とする神戸大学(Kobe University)の岩田健太郎(Kentaro Iwata)教授は、同船内に入った後、船内の検疫態勢が「カオス」だったと非難する動画を公開。

 動画は日英2か国語で用意され、日本語版は100万回以上、英語版も数十万回再生された。日本人の専門家からの異例の批判に、衝撃が広がった。

 岩田氏は20日、報道陣の取材に応じ、船内の知人から検疫態勢が改善されたと聞いたと明かした。

 同氏は、これらの改善により、乗客らへの二次感染の危険は減ったと考える一方で、乗員には依然リスクがあると話した。

 その上で下船した人々について、少なくとも14日間は観察を継続すべきであり、また他者との接触を避けるよう促すべきだと提言した。

 これに対し当局は、検疫態勢に不備はなかったと反論。危険区域と安全区域は厳密に分けられ、また汚染された防護装備を安全に脱ぐための専用場所も設置されていると述べた。

 加藤勝信(Katsunobu Kato)厚生労働相は、当局は最善を尽くしており、厚労省職員のみならず、自衛隊や医療従事者らも全力で対応していることを理解してほしいと述べた。

 また、国立感染症研究所(NIID)はダイヤモンド・プリンセスの状況について、新たな報告書を公表。これには、同船で検疫が開始される前に「COVID-19(新型ウイルス感染症)の実質的な伝播(でんぱ)が起こっていたことが分かる」と書かれている。

 同報告書では暫定的な結論として、「検疫による介入が乗客間の伝播を減らすのに有効であったことを示唆している」と記している。

 同研究所はさらに、当局が直面した特殊な状況に触れ、「クルーズ船の性質上、全ての乗客乗員を個別に隔離することは不可能であった。客室数には限りがあり、乗員はクルーズ船の機能やサービスを維持するため任務を継続する必要があった」と報告している。(c)AFP