【2月20日 AFP】英ロンドンのキングズ・カレッジ病院(King's College Hospital)で今年1月、バイオリン奏者の女性にバイオリンを演奏させながら脳腫瘍を切除する画期的な手術が行われていたことが分かった。同病院が明らかにした。バイオリンの演奏のおかげで、脳の損傷を避けることができたという。

 手術を受けたのは、イングランド南部のワイト島交響楽団(Isle of Wight Symphony Orchestra)に所属するダグマー・ターナー(Dagmar Turner)さん(53)。ターナーさんは2013年、コンサート中に発作を起こした後、成長の遅い腫瘍があると診断され、最終的に手術を受けることに決めた。

 キングズ・カレッジ病院のキヨマーズ・アシュカン(Keyoumars Ashkan)神経外科医長は、ターナーさんの右前頭葉にある重要な脳細胞を守るためのプランを思い付いた。

 その領域は、バイオリンの音程と音色を調節するのに必要な左手の繊細な動きをつかさどる部位に近い。そこで担当医師らは、脳の機能が損なわれていないことを確認するため、ターナーさんが手術中に起きてバイオリンを演奏し、モニタリングをすることを提案した。

 手術中の映像には、ターナーさんがバイオリンを演奏し、医師らがモニタリングする様子が映っている。

 アシュカン氏は、「彼女の左手の全機能を保ったまま、悪性の活動が疑われるすべての領域を含む腫瘍の90%超を何とか切除した」と述べた。

 13歳の息子がいるターナーさんは、10歳の頃からバイオリンを演奏してきた。今年1月に手術を受け、その3日後に退院した。

 ターナーさんは、「医師らのおかげ。一刻も早く楽団に復帰したい」と語っている。

 映像はキングズ・カレッジ病院提供。(c)AFP