■「恐れを知らない司令官」 白髪はちょっと増えた

 神経の擦り減る過酷な隔離生活が続くうちに、乗客たちはアルマ船長の落ち着いたアナウンスに信頼を寄せていった。「乗客の間でパニックが起きていない理由の一つは、船長のリーダーシップだ」と、乗客の一人はツイッター(Twitter)に投稿した。

「定期的に情報を提供し、検疫官に相談して乗客のリクエストに応え、デッキを歩き、医薬品の配布の遅れを謝罪する…こんな人に、私たちの国の指導者になってほしい」

 また、米ニューヨークのハドソン川(Hudson River)に旅客機を不時着水させ、乗客全員の命を救った「ハドソン川の奇跡」のチェズレイ・サレンバーガー(Chesley Sullenberger)機長(当時)を思い出したと投稿した乗客もいた。

 乗客からは「恐れを知らない司令官」への応援メッセージが殺到し、アルマ船長はよく感謝を口にしていた。「私を心配してくれる皆さん、あなた方の優しさにとても心を動かされました。ご安心ください、私は元気そのものです。12日前とそっくりそのまま同じ船長です。ただ、白髪はちょっと増えましたが」

 アルマ船長のメッセージにはしばしばイタリア語のフレーズが登場した。食事の際に「ボナペティート(召し上がれ)」と言ったり、下船する乗客に「アリベデルチ(さようなら)」と声を掛けたり、といった具合だ。一方で、恥ずかしそうにイタリア語なまりの英語を謝罪することもあった。

「イタリアにいる友人が、私のアナウンスを録画した動画を送ってくれました。何度も何度もこれを聞かされた皆さんに謝ります」とアルマ船長は述べている。「正直、自分で自分のアナウンスを聞いて、発音のひどさに驚きました。でも、悪いのはマスクです。そういうことにしておきましょう」

 母国イタリアでは、アルマ船長を「イル・カピターノ・コラッジョーゾ(勇敢な船長)」とたたえている。妻マリアンナ(Marianna Arma)さんによれば、アルマ船長は「温厚で、責任感の強い人」だという。

 故郷サンタニエッロ(Sant'Agnello)のピエトロ・サグリスターニ(Pietro Sagristani)市長は、地元住民全員が心配しながら日本から届くニュースを追っていると話し、「だが、われわれは彼を信頼している」「彼はきっと大丈夫だ」と語った。(c)AFP/ Richard Carter, with Franck Iovene in Rome