【2月20日 AFP】フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は19日、国内のイスラム分離主義への新たな対応策を発表した。しかし、演説前に公共の場での着用を禁止されている顔全体を覆うベール姿の女性を見逃したことで、極右の非難の的になった。

 フランスは2010年、欧州で初めてニカブと呼ばれる顔全体を覆うベールの公共の場での着用を禁止。以来、ニカブは政治論争の的になってきた。

 しかし、マクロン氏が演説前に現地視察を行った際、赤紫色のニカブを身に着けた若い女性が、人混みをかき分けて警察官に警護されたマクロン氏に接近。女性がベールをめくると、マクロン氏はいつものように満面の笑みで自撮りに応じた。この場面はカメラで撮影され、直後にソーシャルメディアに投稿された。

 信仰する宗教を表す衣服を着用した場合、最高150ユーロ(約1万8000円)の罰金が科されることになっているが、実際に適用されることはほとんどない。右派政党はこうした現状にいら立ちを募らせ、当局はイスラム分離主義に甘すぎると非難してきた。

 極右政党「国民連合(RN)」のブルノ・ビルド(Bruno Bilde)議員は、女性が2010年の法律を公然と破るのを見逃したとして、マクロン氏を激しく非難。さらに、クリストフ・カスタネール(Christophe Castaner)内相に提出した質問書の中で、「共和国を(イスラム教徒から)取り戻そうとする前に、共和国の法律を適用しなければならない」と主張した。

 マクロン氏は演説の中で、国内のイスラム教への「外国からの影響」を防ぐための一連の措置を発表した。この中には、アルジェリアやトルコなどからフランスに派遣されたイマーム(宗教指導者)約300人を段階的に送還するものも含まれている。

 さらに、選択科目の外国語を教えるためにフランスに派遣された外国人の監視も強化する。現在のところ、こうした外国人には限定的な監視しか行われていない。

 マクロン氏は、「こうした制度で今問題になっているのは、フランス語を話さない教師がますます増えてきているということだ」と述べた。

 フランスでは2015年以降、相次ぐイスラム過激派による攻撃で250人以上が死亡しており、一部の国内移民社会の中でアラブ人教師らが若者たちを急進化させかねない過激思想をあおっているとの批判の声も上がっている。(c)AFP