【2月20日 AFP】米国の科学者チームは19日、新型コロナウイルスがヒト細胞に結合して感染する際に用いる部位について、原子スケールの3Dマップを初めて作成したと発表した。ワクチンや治療法の開発に向けた極めて重要な一歩だという。

 米テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)と米国立衛生研究所(NIH)の研究チームはまず、中国の研究者らが公表した新型コロナウイルスの遺伝情報を調査し、そのデータを利用して「スパイクタンパク質」と呼ばれる重要な部位の安定化させた試料を開発した。

 研究チームは次に「極低温電子顕微鏡法」と呼ばれる最新鋭の技術を用いてスパイクタンパク質を画像化した。今回の研究結果は米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 研究を率いたテキサス大オースティン校の科学者、ジェイソン・マクレラン(Jason McLellan)氏は、AFPの取材に「このスパイクは、実際には抗原だ。この抗原を人体に導入して、スパイクタンパク質に対抗する抗体を作り出す人体の免疫反応を事前に準備させたいと考えている。そうすることで人体が実際にウイルスを認識する際には、免疫系の攻撃態勢が整っていることになる」と語った。

 研究チームはすでに、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などを含むコロナウイルス科に属する別のウイルスを長年研究対象としているため、スパイクタンパク質を安定な状態に保つのに必要な技術手法を開発する助けとなったと、マクレラン氏は続けた。

 研究チームが加工したスパイクタンパク質自体も、ワクチン候補としてNIHで試験が実施されている。

 研究チームはこのスパイクタンパク質が引き起こす免疫反応の増大による改良を可能にする目的で、作成した分子構造の3Dマップを世界各地の共同研究者らに送付する予定だ。

 また今回のモデルは、スパイクのさまざまな部位に結合して正常に機能しないようにする新たなタンパク質を開発する上で助けになる可能性がある。感染患者を治療するために用いられるこれらのタンパク質は抗ウイルス剤として知られる。(c)AFP