【2月19日 AFP】(更新、写真追加)新型コロナウイルスの集団感染が確認され、横浜港で検疫下に置かれていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス(Diamond Princess)」で19日、船内に残っていた乗客の下船が始まった。ただ厚生労働省は同日夜、乗船者の中からさらに79人の感染が判明したと発表した。

 これにより、ダイヤモンド・プリンセスの感染者数は計621人となり、中国以外では最大の集団感染が発生した場所となった。日本政府の検疫対応に対し、批判の声が高まっている。

 14日間の検疫期間が終了し、ウイルス検査の結果が陰性と認められた人から順次下船する。19日に下船を許可されたのはおよそ500人。

 夢のクルーズは一転し、不安と、窓のない狭い船室に閉じ込められる極度の退屈という悪夢へと変わった。

 6歳の息子と船室に待機していたという乗客のヤードリー・ウォン(Yardley Wong)さんは、ツイッター(Twitter)に「陰性! 私も息子も夫も父母も! 神さま、私たちをお守りくださりありがとう。今は感極まっている」と投稿。

 検査結果が陰性で、症状が見られない人にはコロナウイルス感染のリスクはないと書かれた診断書が渡された。

 しかし、全員が幸運だったわけではない。

 英国人の乗客デービッド・アベル(David Abel)さんは検疫期間の最初の頃、「自分だけでなく、他の乗客も全員が精神的にこたえている。状況が分からないことが本当につらい」という動画メッセージを投稿していたが、後に妻ともども検査結果で陽性と判定された。

■「カオス」──専門家が対応を公然と批判

 ダイヤモンド・プリンセスをめぐっては、前日18日に同船内に短時間入ったというある専門家が、日本政府の対応を批判する動画を公開し、波紋が広がっている。

 感染症対策を専門とする神戸大学(Kobe University)の岩田健太郎(Kentaro Iwata)教授は同日夜、動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」に日英2か国語で動画を投稿。

 この中で岩田教授は、船内の状況は「カオス」であり、隔離規定に違反していたと指摘。同船の感染対策は全くもって不適切だったと証言した。日本人の専門家から単刀直入な批判が上がるのは極めてまれ。

 岩田教授は、そこで目撃した状況を非常に懸念しており、家族を感染させないよう自ら14日間の隔離に努めると述べている。(c)AFP