■悪運を招くとして寄り付かず

 ラシダさんは悲しみに打ちひしがれるものの、24歳と27歳の息子たちがラシダさんと年下のきょうだい2人を見捨てたことには驚かない。「二人は結局、この社会の一部だ」と話しながら、ラシダさんは涙を拭った。

 昨年バングラデシュを襲ったサイクロンにより、ラシダさんの掘っ立て小屋も屋根を吹き飛ばされた。しかし近隣住民や当局の手伝いや支援はない。当局は同じ村の他の住民たちに支援を施しているが、自分を除け者にしているとラシダさんは主張。防水シートを使って風雨をしのいでいるという。

 損傷した屋根を修理していた隣人のモハマド・フセイン(Mohammad Hossain)さん(31)は、ラシダさんに話し掛けないようにと妻に言いつけられていると打ち明けた。「私の家族の幸福を台なしにして、悪運を招くかもしれない」と語る。

 当局はサイクロン後の支援対象から、ラシダさんを除外したことについて否定している。

 しかし「Ledars Bangladesh」の代表者によると、「トラの未亡人たち」に対する不当な扱いは非常に保守的な社会で広く存在しており、こうした社会は「数世紀も前の」偏見を抱いていることが多いという。

「(慈善団体は)残された女性たちの尊厳を回復するための活動に従事している。難題は人々の考え方を変えることだ」

 さらにこの代表者は「変化はとても遅い。だがそれでも、進歩はあったと言える」と指摘。若く、教育を受けた村人たちはそうした妻たちに対し、比較的恐れを抱かないという。