【2月18日 AFP】南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)時代に最後の大統領を務めたフレデリク・デクラーク(Frederik de Klerk)氏(83)が今月初め、「アパルトヘイトは人道に対する罪ではなかった」と発言した。これは猛反発を招き、同氏は17日、謝罪して発言を撤回した。

 デクラーク氏は少数白人支配に終止符を打ち、同国に民主主義をもたらしたとして、1993年、故ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領とノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を共同受賞している。

 問題発言があったのは今月2日、国営南アフリカ放送協会(SABC)のインタビューの際。国連(UN)が人道に対する罪と宣言しているアパルトヘイトについてデクラーク氏は、「人道に対する罪ではなかった」と公に否定。

「アパルトヘイトが人道に対する罪であるという考えは、白人の南アフリカ人に汚名を着せる目的で、ソ連とその協力関係にあったアフリカ民族会議(ANC)や南アフリカ共産党(SACP)が仕掛けたアジプロ(扇動的宣伝)策だったが、それがいまだに続いている」と主張。さらに同氏の財団が、この発言を強調した。

 ANCはマンデラ氏の下、水面下でアパルトヘイトと闘っていた組織で、1994年に行われた同国初の民主的選挙で与党となった。SACPはANCとかつて同盟関係にあった政党だ。

 デクラーク氏の発言に、多くの南アフリカ人が激怒。13日には、議会で左翼政党「経済的解放の闘士(EFF)」の議員らが激しい抗議を行い、シリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領による毎年恒例の一般教書演説の開始が遅れる事態となった。

 反アパルトヘイト運動の象徴的存在であるデズモンド・ツツ(Desmond Tutu)元大主教(88)が設立した財団は、デクラーク氏のこの発言について、「アパルトヘイトのおぞましさの度合い」を議論するのは「無責任」だとし、デクラーク氏本人に発言の撤回を要求した。

 これを受けて同氏は17日、発言を撤回し、「この発言が引き起こした困惑、怒り、痛み」について謝罪した。問題発言は、同氏の財団のウェブサイトからも削除された。

 ただEFFは、「誠意と重み」を欠いた「空疎な」謝罪だとして、受け入れを拒否している。

 アパルトヘイトは一世代前に廃止されたものの、同国における人種間の緊張は依然強く、経済不均衡と貧困も厳存している。(c)AFP