【2月25日 CNS】中国では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、京東(JD.com)や蘇寧(Suning.com)などのオンライン商店で注文が激増して人手不足となる反面、多くの伝統的なサービス業では、人々が外出を控えていることなどから従業員の仕事がないという現象が起きている。近頃、「人材共用」方式でこの状況を乗り切ろうとする動きがあり、業界で熱い議論になっている。

 世界の「美食の都」といわれる四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)の「成都市電子商務協会」が10日、微信(ウィーチャット、WeChat)の公式アカウントで、業務内容と企業名、応募方法などを具体的に示した「人材共用」方式の従業員募集を発表した。

 同協会の呉蕾(Wu Lei)秘書長は「募集に伴い、労働法規に関わる潜在的なリスクに注意が必要。今のところは主に目前の切迫した需要に対応する目的で、内部の労務管理がしっかりした企業がこの方式で募集することにしている」と話す。

 しかし、成都市の飲食関係の大型企業は、この方式に対して比較的に冷静、慎重という印象だ。

 四川で火鍋店を経営する江侠(Jiang Xia)董事長は「わが社の100人近い従業員が、生鮮食品スーパーマーケット『盒馬鮮生(Hema Xiansheng)』に働きに出た。その後、わが社の都合で一部を呼び戻し、現在まだ60人余りが『人材共用』で先方にいる」と話す。

 江氏は「『人材共用』方式は人材資源の有効利用で、企業の効率が高まり、従業員も暇な時間を利用した収入増の可能性も模索できる。しかし、労使間の労務関係、労働者の権益保護、双方の権利と責任の分担などの問題があり、今後継続的な検討と改善が必要だ」と指摘する。

「大竜space D火鍋」は全国に300を超す店舗を持ち、1万人を超える従業員を抱える大型火鍋チェーン店だが、総帥の柳鸷(Liu Zhi)董事長は『人材共用』は支持できないと率直な意見を述べる。「小売業と飲食業には一定の差がある。1~2日の短い訓練で職務を満足にこなせるかは疑問だ。二つの業界の仕事の現場も環境も違いが大きい。また、もしも従業員が新しい職場の企業文化に溶け込んだら、人材流出につながってしまうかもしれない。もっと時間をかけてすり合わせが必要だ」と懸念する。

 四川省弁護士協会の杜偉(Du Wei)副監事長は「『人材共用』方式では労働者とオンライン商店との労使関係をはっきりと整理する必要がある。オンライン商店では、現地の最低給与基準に達しないケース、雇用関係の違法な解除、残業代の不払いなどの問題、また給与基数の計算ができないので社会保険に加入できないという四つの労働法規違反が起こる恐れある」と指摘する。

 西南財経大学(Southwestern University Of Finance And Economics)の王褘(Wang Yi)教授は「現段階では『人材共用』方式は特別の時期や局部的な運用に限られる」と分析している。(c)CNS/JCM/AFPBB News