カンボジア下船クルーズ客、世界へ拡散で緊張走る 首都ではバスツアー
このニュースをシェア
【2月18日 AFP】少なくとも1人の新型コロナウイルス感染が判明したクルーズ船「ウエステルダム(Westerdam)」の乗客らが、カンボジアで14日に下船を許可され自由行動を開始したことで緊張が走っている。徹底的な健康診断を受けないまま下船した乗客らが世界中へ散ってしまい、足取りを追跡できなくなる恐れが生じている。
カンボジア当局は17日午後、カンボジアから先へ移動するための旅客機を待つウエステルダムの乗客の一部に、首都プノンペンでバスツアーを提供した。貧困国のカンボジアは新型ウイルスの発生地となった中国と親密な同盟国で、毎年巨額の経済支援を受けている。カンボジアは医療体制が不十分だが、当局にとって健康リスクは二の次のようだ。
ウエステルダムの乗客の一人、クリスティーナ・カービー(Christina Kerby)さんはツイッター(Twitter)に、新型ウイルスに感染していないことが完全に確認されていないにもかかわらず、プノンペンでのバスツアーを許可されたことに「驚いた」と投稿し、広く注目を集めた。
カービーさんはAFPの取材に対し、「(米国内の)家へ帰れば幼い子どもたちがいる。私がウイルスに感染していた場合に、子どもたちや周りの人たちを感染させるリスクを冒したくない」と語った。
カンボジア政府寄りのメディアでは、バスツアーに参加したウエステルダムの乗客が誰一人マスクも着けず、笑顔で親指を立てている写真が報じられた。カービーさんは「道路にはメディア関係者が山のようにいた」と述べ、「こんなショーになるとは思わなかった」と語った。
ウエステルダムは、新型コロナウイルスの感染者が乗船している恐れがあるとして、日本を含むアジア太平洋の各国から入港を拒否され、海上を2週間さまよっていたが、カンボジア当局が南部シアヌークビル(Sihanoukville)への入港を受け入れ、14日に乗客が下船を開始した。その後、空路マレーシアへ移動した83歳の米国人女性の感染が3日後に判明し、波紋を呼んでいる。
17日のマレーシア当局発表によると、感染が確認された女性と同じ旅客機を利用した乗客130人以上がすでに米国、欧州、オーストラリア、香港に向かった。
ウエステルダムの乗客の多数がすでに通過した拠点空港を持つタイ当局は17日、同船をめぐるリスク対応では後手に回りつつも、クルーズ船乗客の通過の全面禁止を検討した。タイのアヌティン・チャーンウィラクーン(Anutin Charnvirakul)副首相兼保健相は、「船舶の乗客にはリスクがあり、彼らが旅客機で移動すれば他の乗客にもリスクが生じる」と語った。
シアヌークビルに停泊しているウエステルダムには現在も乗客233人、乗員747人が残っている。(c)AFP