【2月15日 AFP】香港の医師、アルフレッド・ウォン(Alfred Wong)氏(38)は、新型コロナウイルスの患者を治療する過酷なシフトを終えると、ホテルの部屋で持ち帰りの食事を食べながら孤独感を味わい、妊娠中の妻と引き離される苦しみと闘っている。

 ウォン氏は、後から招集されて、今後2か月のうちに控える娘の誕生に立ち会えなくなるのを避けるため、「汚染チーム」と呼ばれる隔離病棟の医療スタッフへの参加を自ら名乗り出た。

「いま私にできることは、自分自身を守り、家族や友人と距離を置くよう心がけることだ」。ウォン氏はAFPに対してそう語った。チームにいる間は、愛する家族との接触を最小限に抑えるように決めているのだという。

 2月初めにチームに参加して以降、ウォン氏は病院から徒歩圏内にあるホテルに寝泊まりしている。体と防護服に隙間ができないように髪も短くした。たまに、自宅の玄関先に妻が置いてくれた手作りの弁当を受け取っているという。

 ウォン氏は、頻繁に洗い過ぎてかゆくなった手をこすりながら、「私が(妻に)与えられる一番のプレゼントは、おそらく、生きている夫でいることだ」とブラックジョークを飛ばした。夫婦は、バレンタインデーにお互いが見える別々のテーブルで食事のできる、静かなレストランを探していた。

 数百人の医師や看護師らがウォン氏と同じように、家族と隔離された生活を送っている。

 香港では15日午前0時までに56人の感染が確認され、うち1人が死亡している。人数こそ少ないものの、公立病院では隔離病棟の約60%を感染者、または感染の疑いのある患者が占めており、700万人もの人口が密集した香港の病院にとって大きな負担となっている。