【2月14日 AFP】韓国映画『パラサイト 半地下の家族(Parasite)』が第92回米アカデミー賞(Academy Awards)で最高賞の作品賞を獲得して以降、観光客らがソウル市内のロケ地を訪れるようになっており、宅配用の箱が作品内に登場するピザ店では売り上げが倍になるなど、地元経済に恩恵をもたらしている。

『パラサイト』はジャンルにとらわれないサスペンス映画でありながら貧富の格差を題材に取り上げ、アカデミー賞で4部門を受賞。非英語映画が作品賞を受賞するのは1929年に始まったアカデミー賞史上初めての快挙で、韓国は喜びに沸き返った。

 映画に登場する貧しいキム一家がアルバイトで宅配用の箱を組み立てた「スカイピザ(Sky Pizza)」はソウル南部にある何の変哲もない10席ほどの店だが、店主のオム・ハンギ(Eom Hang-ki)さん(65)は「売り上げは2倍になった」「注文が多すぎて、昨日ピザを焼く機械が壊れてしまった」と語った。

 スカイピザを訪れた男性客(37)は「韓国人の一人として誇らしい気持ちになった」と語り、「これまで大手チェーンのピザ屋にしか行ったことがなかったから、映画のロケ地であるこの店に来るのは本当に特別だ」と感慨にふけった。

 ソウル市は市の観光促進ウェブサイトにロケ地4か所の詳細を掲載するなど、パラサイト現象の活用に躍起となっている。

 作品内でキム一家の長男が友人から裕福なパク一家の娘の家庭教師の仕事を打診されるシーンで登場するスーパーマーケット、「豚米スーパー(Pig Rice Supermarket)」はソウル西部にある家族経営の店で、同店を35年運営している店主は「本当にうれしい、ここで素晴らしい映画を撮ってくれたこと、私を有名にしてくれたことも感謝している」と話した。

 ただ、反響のすべてが好意的に受け取られているわけではない。豚米スーパーの店主によると、ロケ地を観光名所として保存するという話が持ち上がっており、一部の住民は「ここが再開発されないのではないかと心配している」という。(c)AFP