【2月14日 Xinhua News】作業場に入る前には靴底を消毒し、上着にアイロンをかける。食堂では交代で食事を取り、互いに少なくとも2メートル離れて着席する。

 これらは日本の武蔵野化学研究所の中国現地法人、武蔵野化学中国が新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受けて取った感染防止対策の一部にすぎない。中国東部の江西省(Jiangxi)にある同社は今週、春節(旧正月、Lunar New Year)休暇を終え操業を再開した。

 同社の范貴増(Fan Guizeng)常務副総経理は「従業員の安全が企業の第一の任務。十分な予防対策を取っている」と語る。同社では、従業員150人のほぼ全員が出社しているという。

 中国で事業を行う多くの日本企業が、同社のように周到な安全対策を講じた上で、今週から徐々に企業活動を再開している。これらの企業の中には、新型肺炎の拡大を受け、従業員が自由に勤務時間を決められる「フレックスタイム」制や在宅勤務を選べるようにしているところもある。

 日本電波工業が江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)に設立した現地法人では、休業明けの10日以降、従業員1128人の約半分が出社した。同社の藤原信光董事長は、地元政府がサービスチームを立ち上げ、外国企業にタイムリーな情報を提供していることが、外国企業の活動再開に大きく役立っていると述べた。

 一方で生産量については懸念を示す。省外へ帰省した従業員がいつ戻ってくるのか定かでなく、川下の取引先も十分な従業員が戻ってきていないからだ。ただ藤原氏は「共に努力することで困難を乗り越えられると信じている。中国経済は必ず正常に戻る」と前向きな考えも示した。

 中国東部の浙江省(Zhejiang)平湖経済開発区では、30社以上の日本企業の9割以上が13日までに活動を再開した。

 日本電産テクノモータの現地法人、日本電産芝浦浙江では1100人以上の従業員が既に職場へ復帰している。同社は全ての公共スペースを消毒し、従業員に交代で食事を取るよう指示している。同社総務部の張育平(Zhang Yuping)次長は「感染防止対策で業務が増えたが、ウイルスの抑え込みと会社の発展には欠かせない仕事。措置は全面的に実行する」と述べた。

 中国商務部は10日、地方政府に対し、新型肺炎の流行期間中は外資系企業により良いサービスを提供し、秩序ある生産活動の再開を支援するよう求めた。

 今回の新型肺炎は外資企業の中国事業に損失をもたらしたが、多くの企業の経営幹部は、マイナスの影響は一時的なものであり、中国は成長の勢いを取り戻すとの見方を示す。

 リコー(Ricoh)中国投資の上海オフィスでは、始業前に体温測定を受けた従業員が、マスクをして同僚との距離を少なくとも1メートル空けて座っている。同社では一度に多くの人が集まらないようランチタイムも延長している。

 同社の宮尾康士董事長兼総経理は、社員と取引先に寄せたメッセージで「新型肺炎は一時的だが発展は永遠に続く」と述べた。同社が今年は技術的優位性をさらに掘り起こし、デジタル化作業モデルを推進していく考えも示した。

 キヤノン(Canon)中国の小沢秀樹董事長兼最高経営責任者(CEO)は、新型肺炎の影響が大きい地域の役に立つため、300万元(1元=約16円)相当の高性能医療用コンピューター断層撮影装置(CT)「Aquilion Lightning」を寄贈したことを明らかにした。同社は中国市場でさらなる発展を遂げるため、より多くの先進的な製品や技術を導入し、中国のパートナーとの協力を強めていくとしている。

 三菱電機(Mitsubishi Electric)中国は業務を段階的に再開するとともに、全ての従業員に一時的な在宅勤務を奨励している。同社の富沢克行董事長兼総経理は「一部の従業員は依然として数日間自宅待機させる必要があり、一部の取引先は武漢(Wuhan)にあるので、マイナスの影響を受ける可能性はある」と述べた。一方で「中国で長期的に発展する機会はある」との考えも示した。第5世代移動通信システム(5G)などの産業や食品、ヘルスケアへの投資が急速に伸びていることについては「前向きな要素になる」と述べ「中国は質の高い発展を成し遂げると信じている」と期待感を示した。

 中国南西部の四川省(Sichuan)の省都・成都(Chengdu)には富士康科技集団(フォックスコン、Foxconn)やインテル(Intel)、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)など世界的な企業が拠点を置く成都ハイテク産業開発区(高新区)がある。地元の関係部門は昼夜を問わず企業の感染防止活動に協力しており、企業活動の秩序的な再開を支援している。

 高新区にある出光電子材料中国の中島光茂総経理は「現地政府の速やかで十分な指導の下、1日までに詳細な緊急対策計画を策定し、10日からは従業員三十数人が出社している」と説明。従業員や家族の安全を守るため、日本の本社からマスク数千枚を調達して配布したほか、一部はハイテク区にも寄付したという。中島氏は「マスクの数はそれほど多くはないが、成都と共に困難を乗り切りたい」と語った。

 中国では、肺炎の拡大を受けて外出を控える人が増えたため、ネット消費が活発化している。イトーヨーカ堂(Ito Yokado)のオンライン販売も同様に伸びている。

 同社は急増するオンライン需要に対応するため、インターネット販売向け商品の種類を2倍に増やした。1日の注文数は通常の4倍の1600件に増えたという。

 成都イトーヨーカ堂の店舗マネジャー、李麗娟(Li Lijuan)さんは「今年の春節期間中、実店舗の来客数は前年同期に比べて3割減少しましたが、売上高は2倍に増えました」と説明。「今ではほぼ全ての従業員が勤務しており、お客様に質の高いサービスを提供しています」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News