【2月13日 時事通信社】第2次大戦中から暗号機を製造し、2018年まで操業していたスイス企業が、長年にわたり米国とドイツの情報機関によって秘密裏に運営されていたと、米独のメディアが報じた。敵対国だけでなく日本を含む同盟国や友好国も顧客で、販売された機器を通じ米独両国が機密情報を大量に解読していたという。

 米紙ワシントン・ポストと独公共放送ZDFが11日、米中央情報局(CIA)の資料や関係者の証言などに基づいて報じた。問題の企業は、米軍へ暗号機を納入していたクリプト社。1950年代からCIAとの関係を深め、70年ごろにCIAと西独(当時)情報機関の連邦情報局(BND)が買収した。

 買収後はCIAとBNDが同社を運営し、リヒテンシュタインの法律事務所の協力を得て、株主が外部から分からないよう工作。販売する暗号機に仕掛けを組み込み、暗号を使ってやりとりされた機密情報を容易に解読できるようにした。

 暗号機の販売先は120カ国に上り、日韓両国や北大西洋条約機構(NATO)の同盟国のほか、イランやリビアといった敵対国、カトリック総本山のバチカン(ローマ教皇庁)などが含まれる。ただ、中国とソ連(当時)はクリプト社を信用せず、顧客にならなかったという。

 79年の在イラン米大使館占拠事件でCIAは、イランと仲介国アルジェリアの当局者によるクリプト社製品を通じたやりとりを入手。82年のフォークランド紛争では、クリプト社製品を使っていたアルゼンチン当局の機密情報を取得し、英国に伝達した。

 ワシントン・ポストは「少なくとも英国、イスラエル、スウェーデン、スイスの4カ国は(クリプト社の)実質運営主体を知っていたか、米独から(同社製品で得た)機密情報を提供されていた」と伝えている。

 BNDは東西ドイツ統一後の93年に経営から撤退。暗号技術のハイテク化で市場でのクリプト社の優位性が低下する中、単独で運営を続けたCIAも2018年、同社をスイス国内事業と国際事業に2分割して売却した。(c)時事通信社