【2月17日 東方新報】新型コロナウイルスの感染による肺炎の拡大で、中国では全国的にマスクなどの医療用品が不足し、非常事態時の徴用・徴発法などを根拠としたマスク争奪戦が地方で起きている。

 雲南省(Yunnan)大理市(Dali)の衛生健康当局は1日、「緊急処置徴発通知書」を出し、雲南省瑞麗市(Ruili)が重慶市(Chongqing)に発送したマスク600箱を「緊急徴発」した。

 通知書によれば、大理市は重大突発性公共衛生事件I級状態で、感染拡大を防止するための用品が極度に不足しており、伝染病防疫法、雲南省突発緊急事件徴発保障法などに基づき、宅配便大手の順豊エクスプレス(SF Holding)が瑞麗から重慶に運んでいたマスクを強制的に取り立てたという。

 通知書では、1年以内に大理市衛生保険当局に申請すれば補償金が支払われるが、「申請期間を過ぎれば、その権利を放棄したものとみなす」としている。

 このマスクは、重慶市の防疫対策指導チームがサプライヤーに委託して購入、順豊グループ傘下の雲南順豊速運の大理支社が輸送を依頼された。これに対して重慶市は大理市に、返還するように通知書を出した。

 雲南省はこの件に関して、大理市のやり方を批判。「兄弟省市の防疫対策と人民の感情を損なった」として、物資の即時返還を命じ、同様の問題を起こさないように全省に通達した。6日には、当事者間で話し合いをして問題が解決したという。

 ほかにも、四川省(Sichuan)錦江(Jinjiang)政府が調達したマスク30万枚が、装甲車と30人のフル装備の警官による警護をつけて輸送中に、同省綿陽市(Mianyang)の警察によって通行を止められた上、このうち20万枚が徴発され、さらに綿陽市がそのマスクを運ぶ途中で、これを狙って金堂県(Jintang)の公安が取り立てようとしたが抵抗したという例も。

 また、山東省(Shandong)の民間工場が購入したマスクが山東省政府に取り上げられた例、江蘇省(Jiangsu)常州市(Changzhou)が海外から購入したマスク50万枚を広州(Guangzhou)の税関に差し押さえられた例などが国内外で報道されている。

 国務院は1月29日に「いかなる理由でも、医療物資を徴発することは許さない」と通達しているが、感染拡大防止の厳しい任務を遂行するための最低限の医療用品も手に入りにくくなる中、地方レベルの混乱は収まっていない。(c)東方新報/AFPBB News