【2月11日 AFP】タイで兵士1人が銃を乱射し、少なくとも29人が死亡した事件を受け、軍司令官は11日、喪に服する国民に対し「軍を責めないでほしい」と涙ながらに訴えた。

 大将のアピラット・コンソムポン(Apirat Kongsompong)司令官はテレビ中継された記者会見で、軍を代表して事件の犠牲者に謝罪した際、涙を流した。

 9日朝まで17時間にわたって続き、29人が死亡、数十人が負傷した事件では、陸軍の上級曹長ジャカパン・トンマ(Jakrapanth Thomma)容疑者が、警察の特殊部隊に射殺された。

 軍は容疑者を、軍の組織上の所産ではなく、ならず者の兵士だったという印象を与えようと苦心している。

 アピラット司令官は、2014年の最後のクーデター以降、巨額予算を抱え、政治やビジネス、徴兵制など、タイにおける日常生活の隅々にまで浸透した軍の総責任者としての立場から身を引くことは否定。

 司令官は「軍は数十万人の人員から成る巨大な組織だ…部下一人一人を注視することはできない」と述べた。

 その上で「軍を批判する人々がいる、私は軍を非難しないよう求める…なぜなら軍は神聖な組織だからだ」と話したアピラット氏は、「私を責めてほしい、アピラット大将を」と訴えた。

 ただアピラット司令官は、今回の事件は容疑者と上官の借金をめぐるいさかいが原因だったとして、上官らについて下士官らが今後抱えるすべての不満を調査する「特別なルート」を設けると約束。

 容疑者は「経済的な見返りを約束した上官とその親族から妥当な対応が得られなかった」と指摘し、住宅の売却をめぐる手数料が原因になったとみられると説明。襲撃に及んだ容疑者はまず、上官とその義母を殺害していた。

 タイ軍の上級将校らは国営企業の役員を務め、その多くが数百万ドルもの資産を申告している一方で、部下である兵士らは薄給に甘んじているとされる。

 また軍の兵舎は、不動産会社や民間警備会社といったグレーゾーンビジネスの温床になっていると指摘されている。

 アピラット司令官は「2月から4月の間に将官級から佐官級まで、多くの者が職を失うことになると保証する」と明言。また政府職員住宅から退役将校らを退去させることも約束した。

 司令官自身は、9月に退役することになっている。(c)AFP