【2月11日 AFP】中国の流行の中心地に一度も足を踏み入れることなく、少なくとも11人を新型ウイルスに感染させた英国人男性の旅路は、ウイルスがグローバル化された世界にどれほど速く拡散しているのかを示している。

 この成人男性はシンガポールで会議に出席した際、新型コロナウイルスに感染。その後、フランス・アルプス(French Alps)での休暇中に複数の英国人にウイルスをうつし、帰国後ようやく新型ウイルスに感染していると診断された。

 この男性から感染した人のうち5人がフランスで、別の5人は英国で、もう1人はスペインのマジョルカ(Mallorca)島で入院している。

 男性はどのようにして、これほど速くさまざまな場所で新型コロナウイルスをうつしたのか?

■シンガポール

 男性は先月20~22日にシンガポールで開かれたビジネス会議に出席。会議の出席者100人超の中には、新型コロナウイルスの流行中心地である中国・湖北(Hubei)省出身の中国人少なくとも1人も含まれていた。

■フランス・アルプス、オートサボア(Haute-Savoie)県

 その後男性はフランスに移動し、先月24~28日の数日間、フランス・アルプスのスキーリゾート、コンタミンヌモンジョワ(Contamines-Montjoie)に滞在。同じシャレー(アルプス地方の伝統的な木造家屋)の2部屋で、英国人グループと過ごした。

■英ブライトン(Brighton

 男性は英イングランドに帰国した後発熱し、南東部ブライトンにある医療センターを受診。新型コロナウイルスに感染していると診断された。今月6日には、首都ロンドンにあるセント・トーマス病院(St Thomas' Hospital)の感染症科に移された。

 フランスのスキー場にあるシャレーで男性と接触した5人については、英保健当局が感染を確認。

 男性が入院直前に訪れたパブ「グレナディア(The Grenadier)」の一部スタッフも隔離措置を受けているが、パブは営業を続けている。

 ブライトンの医療センターは10日、「緊急を要する運営に関する衛生、安全上の理由」から施設を一時閉鎖していると発表した。

 BBCとスカイニューズ(Sky News)は、医療センターの職員1人に新型ウイルスの陽性反応が出たと報じているが、公式には確認されていない。

■感染拡大の速度が恐怖に拍車

 専門家らは、この感染速度によって新型コロナウイルスがパンデミック(世界的な大流行)を起こす可能性を示されていると警鐘を鳴らしている。

 一方、英イーストアングリア大学(University of East Anglia)のポール・ハンター(Paul Hunter)教授(医学)は、「フランスでの英国人らが感染したとの最近の報告は憂慮すべきだが、予期せぬ展開は恐らくもうないだろう」と指摘。

 今回の感染例は、「感染はもはや中国に限られないという事実を強固にするものだ。流行がパンデミックになる可能性やその時期、欧州で持続的な人から人への感染が始まるのかどうかを判断するのは時期尚早だ」と述べた。(c)AFP/Marie WOLFROM