【2月10日 AFP】米国のバラク・オバマ(Barack Obama)前大統領夫妻がプロデュースした映画『アメリカン・ファクトリー(American Factory)』が9日、アカデミー賞(Academy Awards)長編ドキュメンタリー賞を受賞した。中国人富豪が再開した米中西部の工場をめぐる作品で、作品を後援した動画配信大手ネットフリックス(Netflix)にとっても栄誉となった。

 本作では、「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」の地域社会が、生活に必須の雇用を取り戻す巨大工場が再開を楽観していたものの、中国人経営陣が従業員らに厳格かつ過酷な要求を突き付け、応じない人々を解雇する展開となり、怒りを募らせ幻滅していく過程が描かれている。

 監督はジュリア・ライカート(Julia Reichert)氏とスティーヴン・ボグナー(Steven Bognar)氏。ライカート氏は受賞スピーチで、「われわれの作品はオハイオ州と中国の話だが、家族により良い生活をもたらそうと人々が制服を着て、タイムカードに打刻しているどんな場所でもあり得る」と語った。

 さらに同氏は、「今日働く人々はますます大変になっている。われわれは、世界の勤労者が団結する時に物事は良くなると信じている」と述べた。

 この作品はブルーカラーから経営陣まで米中両国の勤労者らの生活に、強大なグローバル経済の力がどのような変化をもたらしたかを描き出している。

 オバマ前大統領夫妻は、サンダンス映画祭(Sundance Film Festival)で監督賞を受賞していた本作を昨年初めに獲得し、ネットフリックス上で昨年8月に公開。

 オバマ夫妻の製作会社「ハイヤー・グラウンド・プロダクションズ(Higher Ground Productions)」が手掛けた最初の作品となった。

 本作がアカデミー賞を獲得したことを受けて、オバマ夫妻は9日、ライカート・ボグナー両監督に祝意を伝えるとともに、「悲痛な経済上の変化がもたらした人間らしい影響を語った複雑かつ感動的な物語」だと評価した。

 オバマ前大統領は、「ハイヤー・グラウンドの最初の配信作品で、才能のある実直で善良な両氏がアカデミー賞を取ってきてくれたことをうれしく思う」とツイッター(Twitter)に投稿した。

 またミシェル(Michelle Obama)夫人も同じくツイッターで、両監督の「心と正直さが評価されてうれしい──最高の物語が整然とし、完全であることはまれだから。でもそういった場所にこそ、しばしば真実があるものだ」と記した。(c)AFP