【2月10日 AFP】(更新、写真追加)米カリフォルニア州ハリウッドで9日、第92回アカデミー賞(Academy Awards)授賞式が行われ、韓国映画の『パラサイト 半地下の家族(Parasite)』が外国語映画として初めて、作品賞を受賞する快挙を成し遂げた。同作品は監督賞、国際映画賞、脚本賞の計4部門を独占した。

『1917 命をかけた伝令(1917)』が作品賞の最有力候補とみられていた中、貧しい一家と裕福な家族との出会いから起こる出来事を描いたポン・ジュノ(Bong Joon-ho)監督の『パラサイト』の作品賞受賞は、衝撃をもたらした。同監督は監督賞の受賞にあたり、「(国際映画賞を受賞して)今日はもう終わりであとはリラックスするだけだと思っていた」「朝まで飲みます」とコメントしていた。

 授賞式のオープニングを飾ったのはジャネール・モネイ(Janelle Monae)。モネイは、今年は監督賞に女性が一人もノミネートされなかったことについて、「素晴らしい作品を撮った全ての女性監督をたたえます。私はここで、黒人でクイアなアーティストとして物語を伝えられることを誇りに思う」と語り掛けながら女性やマイノリティーをたたえ、ノミネーションの段階で、アカデミー賞の授賞式はハリウッド映画業界の白人男性たちを賛美する行事との批判におおむね沿った形となった今年の式典とは非常に対照的なパフォーマンスを披露した。

『ジョーカー(Joker)』で各映画賞を総なめにしてきたホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)は、自身初となるアカデミー賞の主演男優賞を受賞。バットマン(Batman)の宿敵を主人公にしたアートシアター系の同作は、この数か月間、暴力を誘発するとの懸念から物議を醸してきたが、フェニックスは、「私たちは同じ愛、映画愛を共有している。この表現手段は、私に非凡な人生を与えてくれた」とスピーチ。「私たちの声を、声を持たない人々のために使い」「不正に立ち向かう」よう呼び掛け、1993年に薬物の過剰摂取によって23歳で亡くなった兄のリヴァー・フェニックス(River Phoenix)さんの詩「愛を持って助けに走れ。平穏は後からついてくる」という言葉を引用し、涙をたたえて受賞のあいさつを締めくくった。

 また、歌曲賞にノミネートされていた『アナと雪の女王2(Frozen II)』の「Into The Unknown」をイディナ・メンゼル(Idina Menzel)をはじめ、各国でエルサ(Elsa)の吹き替えを担当した歌手たちが自国語で歌い上げた。

 今年の主要部門の結果は以下の通り。

<作品賞>
『パラサイト 半地下の家族』

<監督賞>
ポン・ジュノ氏 『パラサイト 半地下の家族』

<主演女優賞>
レネー・ゼルウィガー(Renee Zellweger) 『ジュディ 虹の彼方に(Judy)』

<主演男優賞>
ホアキン・フェニックス 『ジョーカー』

<助演女優賞>
ローラ・ダーン(Laura Dern) 『マリッジ・ストーリー(Marriage Story)』

<助演男優賞>
ブラッド・ピット(Brad Pitt) 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time... in Hollywood)』

<国際映画賞>
『パラサイト 半地下の家族』(韓国) 

<脚本賞>
ポン・ジュノ氏、ハン・チンウォン(Han Jin-won)氏 『パラサイト 半地下の家族』

<脚色賞>
『ジョジョ・ラビット(Jojo Rabbit)』 タイカ・ワイティティ(Taika Waititi)氏

<長編アニメ賞>
『トイ・ストーリー4(Toy Story 4)』

<作曲賞>
『ジョーカー』 ヒルドゥル・グーナドッティル(Hildur Gudnadottir)氏

<歌曲賞>
『ロケットマン(Rocketman)』より「(I'm Gonna) Love Me Again

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