【3月10日 AFP】ワレリヤ・パシュコ(Valeriya Pashko)さん(23)は3年間、不妊治療を続けてきた。今の最後の望みは、国が費用を全額負担してくれる体外受精(IVF)だ。ロシアでは、出生率がこれ以上低下しないよう、当局が戦略としてIVFの処置費用を補償している。

「費用を出してもらえて夫も私も本当に助かっている。とてもお金がかかるので」とソーシャルワーカーのパシュコさんは語った。パシュコさんが不妊治療を受けているモスクワ郊外のバラシハ(Balashikha)の周産期医療センターは、当局が全国の手本として示している機関だ。

 ロシアの出生率の向上はウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領にとって最大の優先事項であり、1月に行われた年次教書演説でも主要問題として挙げられた。

 ロシアの人口は、ソ連が崩壊した1991年は1億4830万人だったが、その後2010年には1億4290万人に落ち込んだ。現在は1億4600万人にまで回復しているが、再び低下する見通しとなっている。

 民間の診療所では、IVFは一連の過程1回で約10万ルーブル(約14万円)から提供されているが、精子提供や卵子提供の金額は含まれておらず、費用は平均月収の3倍を超える。 

 だが、不妊治療としては成功率約30%で最も効果があるとされるIVFは、2013年以降、強制加入の健康保険制度の下、国費で大幅に賄われるようになった。IVFは、年間2万5000件から3万件の出産につながり、全国の出産件数の2%近くを占めている。昨年からは、民間の診療所でIVFを受けた費用も補償されるようになった。

 バラシハの診療所のオルガ・セロバ(Olga Serova)院長は、国が助成してくれるおかげで「(IVF処置の)数は、ほぼ3倍になった」と語る。オフィスには、ロシア正教会の聖像画とプーチン大統領の写真が飾られていた。

 近代的な設備を備えた同センターのまばゆいばかりの不妊治療診療所は、地方にある古ぼけた多くの病院とは対照的だ。国内有数の最優良診療所として、取材も歓迎している。