【2月8日 CNS】先ごろ、西南民族大学(Southwest Minzu University)の卒業生の張さん(仮名)は、個人所得税のアプリを使い検索したところ、「2019年8月所得800元(約1万2000円)、源泉徴収者『成都星晴広告伝媒(以下、星晴伝媒)』」とのデータが画面に表示された。しかし、張さんはその会社で仕事をしたことも、その報酬をもらったこともない。

■50人の学生が同じ会社に「入社」

 張さんは2017年6月に卒業後、税務局に入った。普段から個人所得税のニュースに敏感だ。先月16日、記録を見つけた際、最初は学生の頃に実習でもらった報酬かと思ったが、会社の名称が違った。そこで大学時代のクラスメートの劉さん(仮名)に聞いてみると、劉さんにも同じような所得と納税記録が見つかった。

 劉さんはクラスメートに「私たちの情報がこの会社に盗まれた可能性があるから調べてみて!」と依頼した。1時間ほどたつと、20人を超えるクラスメートから「似た状況あり」との回答がきた。

 別の専攻の同窓生にも似たような状況があることを、劉さんらは発見。時期は2019年7月あるいは8月、源泉徴収者は「星晴伝媒」、所得額は800元。集計すると、同大学の3つの専攻、五十数人の学生情報が使われていた。

 劉さんは「個人情報がどのように流出したのか。自身の個人情報が別のところで悪用され、重大な損害が発生することはないか」と心配している。

■学生の情報を税金対策に利用、企業は認める

 調査によると、「星晴伝媒」は2008年に学生の起業により設立された会社。主たる業務は大学の校内イベント請負だ。法的代表者の黄景山(Huang Jingshan)さんも同大学の卒業生で、2019年には同大学の2019卒業式、卒業生座談会など多くの校内イベントを手掛けている。

 黄さんによると、以前、西南民族大学の学生が数人「星晴伝媒」でアルバイトをしており、経理処理と税金対策のため、友人やクラスメートの情報を書いてもらったことがあったと説明した。

 学生の氏名や電話番号、ID番号などの詳細情報は、学生会やクラブの学生から情報をもらったという。

「毎月、数万元を納税しなければならないので、税金対策として、学生アルバイトに実際200元~300元(約3100円~4600円)支払っている場合、経理処理としては600元~800元(約9300円~1万2000円)払ったことにして、アルバイトの人数も実際20人いたとしても経理処理としては40人とか60人と記帳」「1000元以内にしておけば税金は発生せず会社の運営に影響もない」という。

■脱税の疑い、税務局で受理

 張さんは1日、所得税アプリで自分の訴えが「受理済み」となっていることを確認した。成都市(Chengdu)青羊区(Qingyang)税務局の係員によると「納税者が申請や訴えを行った場合、税務局は当該申請を記録し、担当部署で調査と処理を行う」「現在処理中」という。

 税務専門機構である「中匯税務事務所」の鄒勝(Zou Sheng)パートナーは「もし当該企業の行為が故意によるものと確認されれば、虚偽の支出を計上したことにより脱税と見なされる」との見解だ。(c)CNS/JCM/AFPBB News