【2月5日 AFP】全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2020)の女子シングルスで、四大大会(グランドスラム)初優勝を果たしたソフィア・ケニン(Sofia Kenin、米国)。そのケニンのコーチを務める父親のアレックス(Alex Kenin)さんは、英語の聞き取りに四苦八苦しながら米ニューヨークでタクシードライバーとして働き、そこから娘をグランドスラム女王に育て上げた苦労人だ。

 ロシア生まれのアレックスさんは、少し寂しくなりかけた白髪を持つ控えめな人物で、ほとんどずぶの素人ながら娘をテニスの道へ誘い、ついにはグランドスラム優勝という快挙に導いた。

 ケニンいわく「ものすごく頭が良い」アレックスさんは、観察力で経験不足を補ったという。ガルビネ・ムグルサ(Garbine Muguruza、スペイン)に勝利した決勝後、ケニンは「父は他のコーチの指導を見て、今では何でも知っている」「ちゃんと分かってしゃべっているし、テニスをよく知っているから、作戦も、戦略も適切なものを考える」と話している。

 ケニンの快進撃の要因には、いつもコートサイドにいるアレックスさんの存在が大きかった。15歳の新星コリ・ガウフ(Cori Gauff、米国)や世界1位のアシュリー・バーティ(Ashleigh Barty、オーストラリア)、グランドスラム優勝2回のムグルサらが次々に、頭の切れる父親の作戦を遂行するタフなケニンの餌食になった。

 そしてアレックスさんは、ヴィーナス(Venus Williams、米国)とセレーナ(Serena Williams、米国)のウィリアムス姉妹の父チリャード(Richard Williams)さん、アンドレ・アガシ(Andre Agassi)氏の父マイク(Mike Agassi)さん、マリア・シャラポワ(Maria Sharapova、ロシア)の父ユーリ(Yuri Sharapov)さんと同様、わが子をチャンピオンに育てた父親の仲間入りを果たした。

 今挙げたようなテニス界の親子鷹(だか)は、子どもが親の影響をうとましく思ったり、プレーに悪影響が出たりといったことも多いが、今のところ、アレックスさんと21歳のケニンは仲の良さを保っている。

 ケニンは「父には本当に感謝している。二人でこうした結果を夢見てきて、今その夢がかなった」「父からはポジティブなことをたくさん教わったし、よく分かった上で話をしてくれる」「ときには認めたくなかったり、父が正しいと言いたくなかったりすることもあるけど、本当に一生懸命だから、とにかく感謝している。今回の優勝は二人にとって一生もの」と話した。