【2月5日 AFP】内戦が続くシリアでは、反体制派の最後の拠点に対する政府軍の攻撃により、避難する住民の数が内戦勃発後の約9年間で最大の規模になっている。

 数週間にわたる激しい空爆と地上戦により、同国北西部イドリブ(Idlib)県ではすべての町から人の姿が消え、多数の住民らが北のトルコ国境に向かって避難している。

 国連人道問題調整事務所(OCHA)のデービッド・スワンソン(David Swanson)報道官は「昨年12月1日以降、約52万人が家を追われた。その80%は女性と子どもだ」と言う。

 厳しい冬の寒さに見舞われながらの住民らの脱出は、内戦が勃発した2011年以降で最大級となっている。内戦前の同国の人口は約2000万人だったが、これまでにその半数以上が家を追われた。

 ロシアをはじめとする同盟軍の支援を受ける政府軍と民兵組織はここ数週間、反体制派の支配地域への攻撃を強めている。

 AFPの取材に応じたムハンマド・バフジャト(Mohammad Bahjat)さん(34)は、自分たちの家族はこの数日間で3回激しい空爆から難を逃れたと語る。

「真夜中に脱出した。どこへ行けばいいか分からない」。バフジャトさんは、妻と3人の幼い息子と共にピックアップトラックの前に座り、「いつロケット弾や砲弾が飛んでくるか分からない」と話した。

 シリア政府軍は3日、イドリブ県でトルコ軍を砲撃し、トルコ側に死者が出た。トルコは報復攻撃を行い、シリア側にも死者が出たと伝えられている。トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は4日、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に、シリアから攻撃があればトルコは断固たる対応を取ると伝えた。

 事態の悪化を受けて国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は、「極めて憂慮している」と述べた。

 シリア軍はこれまでに数十の村と、かつて反体制派の拠点だったマーラトヌマン(Maaret al-Numan)などの主要な町を奪還し、その後も進攻を続けている。家を追われた住民らはこれまでになくトルコ国境に近づいている。

 すでに家を追われた300万人以上のシリア人を受け入れているトルコは、さらなる避難民の大量流入は断固阻止する構えだ。(c)AFP/Aaref Watad with Alice Hackman in Beirut