【2月10日 東方新報】「姜子牙」と聞いて分からなくとも、「太公望」や「封神演義」といえば、日本でもピンとくる人は多いだろう。中国の春節(旧正月、Lunar New Year)に合わせて公開される予定だったファンタジーアニメ映画「姜子牙(Legend of Deification)」の上映が、新型コロナウイルスによる肺炎流行の影響で延期された。世界レベルに達する国産アニメ大作として注目度が高かった分、がっかりしたファンも多いが、「新型肺炎を克服したその時に会おう」と引き続き期待されている。

 中国では2019年、アニメ映画「哪吒之魔童降世(Ne Zha)」が興行収入50億元(約784億円)を超え、年間トップを獲得。今も国内最高の興行収入を誇る国産アクション映画「戦狼2」(2017年)に次ぐ史上2位を記録した。中国の古典小説「封神演義」に登場する哪吒のキャラクターを現代風に大胆にアレンジし、絶大な支持を得た。「姜子牙」は、「哪吒之魔童降世」の姉妹編にあたる。姜子牙は、日本で「太公望」と知られる伝説の軍師の本名であり、小説「封神演義」の主人公の一人だ。

「姜子牙」は、「哪吒之魔童降世」を手がけたアニメーションスタジオ「彩条屋映業」が4年をかけて制作。監督は、李煒(Li Wei)氏と程騰(Cheng Teng)氏。李煒氏は「宝蓮灯(Lotus Lantern)」(1999年)や、「紅き大魚の伝説(大魚海棠、Big Fish & Begonia)」(2016年)など数々のアニメに携わってきた大家。程騰氏はかつて制作した短編アニメ「天外有天(Higher Sky)」が米国の学生オスカー賞銀賞を獲得した。最強のコンビといえる。

 かつて少年ジャンプで人気を誇ったマンガ「封神演義」では、太公望はずいぶん若くておちゃらけた仙人として描かれていたが、小説「封神演義」では、姜子牙は「神の中の神」という存在。今回のアニメでは、人間的な姜子牙が神格化されるまでの過程を描いているといわれる。

 古典と融合した世界を最新のCG技術で表現した「哪吒之魔童降世」は、「アニメは低俗で子どもが見るもの」と思っていた大人たちの価値観を覆し、さらに「アニメといえば日本や米国。国産アニメは低レベル」と考えていたファンのハートをわしづかみにした。それだけに「姜子牙」への期待は高かったが、旧暦の元日となる1月25日の封切り直前に上映延期が決定した。

「新型肺炎が流行している今、狭い映画館で2時間、多くの人々が隣り合わせで座るのは自殺行為。仕方がない」

 インターネットの書き込みでは、上映延期に理解を示す投稿が多い。「姜叔叔(姜おじさん)、会える日を待っているよ」というメッセージも見かける。

「封神演義」は、仙人界と人間界を巻き込んだ大戦争を幻想的に描いた作品。その中で姜子牙は暴君を懲罰し、多くの神々を封じていくスーパーヒーローだ。いずれ「姜子牙」が上映される時は、新型肺炎を乗り越え、封じ込めているはず。一日も早く日常を取り戻すため、多くの市民が「姜子牙」の公開を待ち焦がれている。(c)東方新報/AFPBB News