【2月17日 AFP】フランスとスペインにまたがるピレネー山脈(Pyrenees)にある氷河が、気温上昇に伴い30年以内に消滅する可能性があるとの研究結果が発表された。これにより生態系が一変するだけではなく、地域経済も危機に陥る恐れがあるという。

 ピレネー地域のモレーン氷河学会(Moraine Glacier Study Association)の氷河学者、ピエール・ルネ(Pierre Rene)氏はAFPの取材に、同会が過去18年にわたり実施した測定に基づくと2050年までに、ピレネー山脈のフランス側にある15の氷河のうち9か所に終わりが訪れる見込みだと語った。

 国連(UN)の発表によると、過去10年間の気温は観測史上最高だった。温室効果ガスの排出がこのまま続くと世界の平均気温はさらに上昇し、表層氷の後退、海水面の上昇、異常気象の増加などにつながると、国連は警告している。

 ピレネー氷河の測量、コアサンプル、GPS追跡データなどはすべて、アルプス(Alps)山脈や他の場所にある氷河で既に指摘されているのと同様の結論を示している――冬季が温暖化し乾燥すればするほど、氷原の縮小と薄化に歯止めがかからなくなる。

 モレーン氷河学会が追跡調査している氷河9か所の表面積の合計は、ほんの17年前は140ヘクタールだったのに対し、現在は79ヘクタールとなっていると、ルネ氏は指摘する。19世紀半ばには450ヘクタールもあった氷河は、今も加速的に減少している。

 同学会は2019年の氷河の状態についての報告書で、この9か所の氷河は2002年以降、毎年3.6ヘクタールずつ減少しており、これはサッカー場5個分の広さに相当すると説明している。

 2019年も例外ではなかったという。同会が追跡調査している5か所の氷河の下端部が夏季には平均8.1メートル後退し、前年の7.9メートルを上回った。