■苦境の日本の観光業 「日本に応援へ行く」

 日本の厚生労働省は、国内で新たな感染者が見つかっても、患者の国籍を「日本人」と「日本以外の国籍」とだけ発表している。実際は外国人の感染者は中国人とみられるが、「感染や治療に国籍は関係ない」という姿勢から国籍は明かしていない。

 中国各地では武漢市を離れた市民の受け入れを拒む動きが出ており、政府が「われわれの敵は武漢市民でなく、ウイルスだ」と訴えているほどだ。それだけに、日本在住や観光で訪れている中国人への差別をあおるのを避けようとする厚労省の配慮に、中国から「何と文明的な態度だろう」と感嘆の声も上がっている。

 新型肺炎の流行では、日本の観光業界も苦境に立たされている。

 長崎市では、中国ちょうちんが街を彩る「長崎ランタンフェスティバル」が1月24日から2月9日まで行われており、春節(旧正月、Lunar New Year)休みに合わせた中国人観光客を見込んでいたが、中国人客を乗せた天津(Tianjin)からのクルーズ船が入港中止になるなど、例年の4分の1ほどに激減しているという。

 静岡県伊豆市の観光名所・浄蓮の滝では、中国政府が海外団体旅行を禁止した1月27日以降、団体バスのキャンセルが相次いでいる。浄蓮の滝観光センターは「中国人客は団体バスの8割近くを占め、日本人客よりも多いくらいだから死活問題。早く新型肺炎が終息してほしい」と頭を抱えている。

 日本の観光業界のこうした苦難のニュースは中国にも伝わっており、「ウイルスが去ったら日本に応援へ行く」「ささやかながら、今度は私たちが日本の経済に貢献します」という書き込みも目立ってきている。人々の絆を奪おうとする新型肺炎に、国境を超えた「雪中送炭」と「情けは人のためならず」の精神が立ち向かっている。(c)東方新報/AFPBB News