【2月4日 Xinhua News】「おばあちゃん、見なくていいから! こちらは村のドローンです、マスクをせずにあちこち出歩くのは控えてください」。ある村の未舗装の道路で巡回中の小型無人機(ドローン)が、マスクを着けずに外出していた高齢女性を呼び止めた。女性は空を見上げ、声を掛けてきたドローンを笑って眺めると、素直に家に戻って行った。

【特集】収束の兆し見えず、新型肺炎が流行する中国の今

 中国・内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)フフホト市(Hohhot)トゥムド左旗白廟子鎮草房子村で、ドローンを利用して村民に新型コロナウイルスによる肺炎の感染予防・抑制を呼びかけている一幕で、これが短編動画投稿アプリ「抖音(Douyin)」で配信されると瞬く間に拡散し、800万を超える「いいね!」が付けられた。

 この動画が話題になると、中国の農村の空には次々とドローンが飛び、関連する動画がインターネット上に数多く配信されるようになった。中国石炭の一大産地である山西省(Shanxi)では、ドローン協会が100機余りのドローンを確保し、関係部門の各種感染予防・抑制活動に随時協力できる態勢を取っている。

 この種の動画は非常に注目を集めているものの、村民への呼びかけは、今回の感染阻止の闘いの中でドローンが果たす役割の一部にすぎない。

 江西省(Jiangxi)宜春市(Yichun)では、すでに先進的な赤外線サーモグラフィーを搭載したドローンを導入して市民の遠隔検温を実施、潜在的な感染者の発見に役立てている。河南省(Henan)や河北省(Hebei)などの一部の農村地区では、住民が農薬散布用のドローンを利用して村内の消毒を行っている。ドローン製造大手の広州極飛科技(XAG)は全国の村と社区(コミュニティー)で感染予防・抑制と消毒活動を行う「春雷アクション」を実施、活動に参加したドローンユーザーには総額500万元(1元=約16円)相当の部品と保証期間延長サービスを提供している。

 中国の強大な製造力を背景に、ドローンはすでに農村地域で広く普及している。中国民航科学技術研究院航空器適航研究所の劉薇薇(Liu Weiwei)副所長はこのほど、昨年5月26日時点で国内にはドローン製造企業が計1353社あり、機体登録数33万34機、ユーザー登録は31万218件に上っていることを明らかにした。

 山西大学(Shanxi University)哲学社会学学院の邢媛(Xing Yuan)教授は「中国の農村のハイテク化は大きく進歩しており、間違いなくさらに多くのドローンが感染の予防・抑制に投入されるだろう」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News