【2月4日 CNS】新型コロナウイルスの流行の中心地となっている中国・湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)で2日、8000万人のネットユーザーが見守る中、多くの期待を受けてきた新型肺炎専門病院「火神山医院」の引き渡しが行われた。

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 何もなかった土地に、わずか10日間で総面積3万3900平方メートル、ベッド数1000床の病院はどうやって建てられたのか?建設決定から完成までの経緯をまとめた。

■「小湯山チーム」の力を借り17年前の図面を捜す

 武漢市は1月23日、緊急会議を招集し、北京の「小湯山(Xiaotangshan)」モデルにならい、火神山医院を建設することを決定。同日午後1時6分、大手の設計会社「中国中元(China IPPR International Engineering)」は武漢市からの協力要請書を受け取った。

 17年前、「中国中元」の首席総建築師だった黄錫璆(Huang Xiqiu)博士とそのチームは、全国でまん延した「SARS」の中で、命の危険にさらされながらも7日間でSARS患者専用「小湯山」医院の建築設計を完了した。だが、今回はわずか78分で当時の図面を修正・改善し、武漢に送付した。

 午後5時、大手ゼネコンの「中建三局」は、「火神山」プロジェクトの緊急施工準備会議を開く。そして午後10時には大型施工車両を一斉に集結させ、夜を徹して整地工事が始まった。

■人と設備が緊急集結、除夜も徹夜で施工

 病院の敷地は、東西の標高差が約10メートルあり、しかも既存の建物や障害物が多く残っており、取り除く必要があった。除夜の24日はパワーショベル95台、ブルドーザー33台、ローラー車5台、ダンプカー160台と400人の作業員を投入し、夜を徹して小さな山を平らにした。

 人と物資の調達も同時に進められた。すでに春節(旧正月、Lunar New Year)休暇に入っていたため、まったく買えないものや数が足りないものなど、異なるメーカーの規格が違うものを混合せざるを得ない状況だった。

 これらの困難に対し、調達チームは調達できる物資に関する情報をなるべく早く設計院に伝え、設計変更してもらうようにした。また、異なる規格による影響が出ないよう、特別な調整をするなどの工夫を加えた。

■各社が密に協力して柔軟に対応

 建物の躯体(くたい)工事を進めると同時に、補助的な関連工事が同時に進められた。突発的な問題には、各社は柔軟に機動的に対応した。

 中国電信(チャイナテレコム、China Telecom)は、火神山医院の正式引き渡し前に4Gと5Gのネットワーク敷設と遠隔診察などの情報化システムを完成させた。

 中国電信と中国中央テレビ(CCTV)は、高性能5Gネットワークを使い、共同で「疫病24時間」と題する高精細度画像の実況中継を行った。火神山と雷神山の病院の施工状況を24時間休みなく伝え、8000万人のユーザーがインターネット経由で建設の進行状況を見守った。

■厳格な基準に従い汚染物が土壌に浸透しないことを保障

 火神山医院は「十分なスピード」と同時に「十分なレベル」を実現した。

 同工事の設計総責任者である湯群(Tang Qun)さんによると、火神山医院は戦地病院の形式にのっとり、特殊なレイアウトにしている。患者と医療関係者の活動エリアを効果的に隔離し、同時に室内を負圧にすることで空気が外に漏れることを阻止し、交差感染を防ぐことができるという。

 外界が心配する汚染問題については、5万平方メートルに及ぶ浸透防止膜を張り、全エリアを覆い、汚染物が土壌へ浸透しないよう保障している。また、雨水・汚水処理システムを設置、塩素による消毒処理を2回行い、基準値に達してから市の排水路へ排出することとしている。

 病室には非循環型の新鮮な空気供給システムと排気システムを別々に設置、負圧を維持することで、病室内の新鮮な空気を継続供給することができ、排出する空気は消毒後空中に排出する。また、一号病棟の南側にごみゴミ焼却炉を設置、固体廃棄物を集中的に燃焼し、環境汚染にならぬよう配慮しているとのことだ。(c)CNS/JCM/AFPBB News