【3月11日 AFP】アルゼンチン・パタゴニア(Patagonia)西部にある、広大なバカムエルタ(Vaca Muerta)鉱区は、世界第2位のシェールガス埋蔵量を誇る。石油埋蔵量は世界第4位だ。経済危機に苦しむ中、採掘を推し進めた結果、世界中の石油会社が注目する場所となった。

 一方、バカムエルタ鉱区の一部は、先住民マプーチェの居住区でもある。マプーチェの人々は、先祖代々の土地でのフラッキング(水圧破砕法)による採掘は違法である上、フラッキングによる汚染に毎日対処しなければならないと主張している。

 バカムエルタ鉱区の町アニェロ(Anelo)は、数年前までヤギを放牧する小さな村だったが、今では人口8000人を抱える石油産業の中心地へと発展を遂げた。労働者のためのホテルや店舗、巨大なカジノも建設された。

 アレン(Allen)やフェルナンデスオロ(Fernandez Oro)のような近隣の町でも、石油会社の事業拡大に伴い、果物の収量が減少している。

 コマウエ大学(National University of Comahue)農業科学部のアグスティン・ゴンザレス(Agustin Gonzalez)氏によると、過去30年間で2万ヘクタールの生産地が失われた。リンゴの木は1ヘクタールあたり年間1200キロの炭素隔離作用を持つため、この消失は地球温暖化にも影響を及ぼした。

 フェルナンデスオロのマリアノ・ラビン(Mariano Lavin)町長は、石油とガスの採掘に強く反対している。フェルナンデスオロでは昔から、リンゴやナシ、ホップ、ブドウなどを栽培している。

 ラビン氏は「石油採掘活動が始まってから、大地はもはや回復不能になった」と話す。同氏は掘削の場所や条件を定めた、新しい土地利用規約の制定に取り組んでいる。シェールガス産業は非常に特殊な活動で、フラッキングでしか採取できないため、規制が必要なのだという。

 業界は採掘を行う対価を州や地方自治体に支払っている。しかしラビン氏は、環境への代償が大きすぎると指摘する。「われわれはナシやリンゴ、ワイン、ビールの方を大事にしたい」とラビン氏は語った。(c)AFP/Nina NEGRON