【2月1日 AFP】ワールドアスレティックス(World Athletics、世界陸連)は31日、米スポーツ用品大手のナイキ(Nike)の厚底シューズ「ヴェイパーフライ(Vaporfly)」シリーズを履いた選手が世界記録を更新しているケースが続いている状況を受けて、プロトタイプ(試作モデル)として供給されるシューズを大会で使用することは禁止すると発表した。

 世界陸連はコメント文を発表し、「2020年4月30日から、シューズは選手が小売市場(オンラインもしくは店舗)で購入可能であり、大会で使用する4か月前から入手できるものに限る」と説明した。

 ヴェイパーフライのベーシックモデルのソール(靴底)には、カーボンファイバー製のブレード1枚が埋め込まれており、ランナーが踏み出すごとにエネルギーの蓄積と放出が行われる。ソールにはクッション性もある。

 男子フルマラソンの世界記録保持者であるケニアのエリウド・キプチョゲ(Eliud Kipchoge)は、3層のカーボンプレートと四つのエアクッションでソールが構成されるプロトタイプのヴェイパーフライを履いて、昨年10月にオーストリア・ウィーンで史上初の2時間切りを達成した。

 しかし、新しい規則ではそのシューズが禁止されることになり、選手が履くシューズにはいかなる素材であっても「固定されたプレートもしくはブレード」は一枚に限定するとされている。その一方で、スパイクに関しては、「ソールにスパイクピンを装着する目的」として、プレートを追加することが認められる。

 ケニア勢では、ブリジット・コスゲイ(Brigid Kosgei)が2017年から市販されている1層構造のベーシックモデルを履いて2時間14分4秒を記録し、ポーラ・ラドクリフ(Paula Radcliffe、英国)氏が持つ女子マラソンの世界記録を更新した。

 世界陸連のセバスチャン・コー(Sebastian Coe)会長は、「スポーツシューズの市場全体を規制することはわれわれの仕事ではないが、エリートアスリートが使用するシューズが何らかの不公平な補助やアドバンテージをもたらすことがない状況を確保し、エリート大会の高潔性を守っていくことが責務である」と述べた。

「五輪イヤーに突入している現在、かなりの期間にわたって一般に出回っているシューズを規制することは不可能である。しかし、さらなる調査を進めていく中で、現在流通している製品の性能を上回るシューズの使用を禁止して一線を引くことは可能である」 (c)AFP