【1月31日 Xinhua News】日本人男性の嶋田孝治さん(72)はこれまで、中国・湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)で10年間暮らしてきた。1947年に福岡県で生まれた嶋田さんは若い頃、同県の弁護士事務所で働き、50人以上の中国人留学生と知り合った。日本の知人もおらず、不慣れな彼らの様子を見た嶋田さんは、進んで声をかけ、観光やお茶、日本のおいしいものを食べに誘った。さらに、留学生の住まいの保証人も引き受け、学費が払えない学生がいると立て替えたりもした。

 61歳になり、退職して1年が経過していた嶋田さんは、ある留学生から「武漢に戻ってカレー店を開きたいので、指導に来てほしい」と頼まれた。子どもや兄弟姉妹がいない島田さんは、ちょうど中国を旅行したいと思っていたため、この招きに応じることにした。 

 2010年、嶋田さんは武漢の大学が集まる地域に「頂屋咖哩」という名のカレー店を開いた。面積約80平方メートル、日本式のカレーライスがメインで、生活に困っている人からはお金を取ろうとしなかった。毎晩、閉店後には店で無料の日本語教室を開いた。あっという間に10年が過ぎ、これまで嶋田さんが教えた学生は2千人を超えた。

 周囲の人々や中国のネットユーザーは、嶋田さんの思いやりをたたえ、多くの人が「嶋おじいさん(島爺爺)」と呼んでいる。

 武漢市では昨年末から、新型コロナウイルスによる肺炎が発生しているが、嶋田さんは市内にとどまり、ここ数日は武漢在住の中国人スタッフと一緒に春節(旧正月、Lunar New Year)を過ごしている。嶋田さんはその理由について、「武漢が私の家だから。ここでわが家を見つけました」と述べた。

 何年も前に「終活」を終えたという嶋田さんは「財産は全て中国人スタッフに残します。遺灰は中国の海にまいてほしい。簡単に一言、『さよなら』でいいです。それで私は完全に中国の一部になります」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News