【1月30日 AFP】運用が終わった人工衛星2基が衝突速度時速5万3000キロで衝突し、1万個以上の宇宙ごみが飛散する可能性が指摘されていた問題で、両衛星は29日、衝突せずに通過したことが分かった。米空軍宇宙コマンド(US Space Command)が明らかにした。

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 2基はグリニッジ標準時(GMT)29日午後11時39分(日本時間30日午前8時39分)、米ピッツバーグ(Pittsburgh)の約900キロ上空で交差。専門家らは、衝突する可能性は宇宙分野の確率としては高い1~5%としていた。

 宇宙コマンドの広報担当官はAFPの取材に対し、互いに接近する軌道を進んでいた2基は「何事もなくすれ違った」と話した。

 2基のうち1基は赤外線天文観測衛星「アイラス(Infrared Astronomical SatelliteIRAS)」。1983年に米航空宇宙局(NASA)、英国、オランダが共同で打ち上げたが、運用されたのはわずか10か月だった。

 欧州宇宙機関(ESA)のデータによると、アイラスの重量は約1トン、寸法は約4メートル×約3メートル×約2メートルでトラックほどの大きさ。

 もう1基は米空軍が1967年に打ち上げた試験衛星「GGSE-4」で、重量はわずか85キロだが、幅60センチ、長さ18メートルという独特な形状をしている。

 大気圏外の人工天体の運動を研究する宇宙力学者のダン・オートロギー(Dan Oltrogge)氏はAFPの取材に対し、もし両衛星が衝突していたら、大きさ10センチを超える破片が約1000個、1センチ超のものが1万2000個以上飛散していた可能性があると語った。

 大型人工衛星が極めて高速で衝突するのは珍しいが、大量の宇宙ごみが飛散するため地球を周回する他の衛星や宇宙船にとって脅威となる。

 こうした事例が初めて起きたのは2009年で、運用中だった通信衛星「イリジウム33(Iridium 33)」と使用済みのロシアの衛星「コスモス2251(Cosmos 2251)」が衝突し、大型破片約1000個が低地球軌道に飛散した。

 現在、記録されているだけで約2万個のソフトボールより大きい宇宙ごみが地球を周回しており、その速度は最大で時速2万8000キロにもなる。これらを避けるために衛星運用者らはたびたび衛星の軌道を修正しなければならないが、衛星が機能していないとそれも不可能だ。(c)AFP