【1月29日 CNS】中国・湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)の春節(旧正月、Lunar New Year)は、いつものように雨が多かった。そして、新型コロナウイルスの発生源とされる「華南海鮮市場」の水産物や野菜、果物の集散地に、かつてのにぎわいは見られない。

 市場の周辺の建物には「封鎖」の紙があちこちに張られ、人は避けて通る。全ての店のシャッターは閉められ、市場には数人の警備員しか残っていない。

 新型ウイルスの感染による肺炎の流行を受け、この市場では1日、全ての店舗が営業を停止した。冷凍品を扱っていた王さんはこの日、店を閉めるよう勧告された。「全ての商品は持ち出さずに、冷凍庫に入れたままでした。損失は数万元になるでしょう」と話す。

 市場閉鎖後、王さんは故郷に戻り、自身を「隔離」したが、新型肺炎の流行の状況が気になる。「毎日スマホでニュースを見ていますよ。良いニュースが入ってくるのを待っているのです」

 家禽(かきん)類を販売する馬さんの店は、市場の西区にある。「市場が閉鎖後、近くの2店の経営者が感染しました。幸い、すでに回復して退院したと聞いています」「初めはみんな、普通のインフルエンザくらいに軽く考えていて、恐怖感はありませんでした」と述べた。

 馬さんは「政府から生活手当が支給されました。でも、昨年末に多くの注文を受けていたのですが、感染拡大で全部なくなってしまいました。生活しなきゃいけないのですが、いつ市場が再開するのか分かりません。春節が終わったら、生きていく道を探さねばと思っています。この騒ぎが早く終わることを祈るばかりです」と語った。

 華南海鮮市場から道を1本隔てたところにある「華南果物卸売市場」では、いくつかの店が営業していた。暇そうに一人で店番をしていた人は、時折、白いノイズが入るテレビを見ていた。電気ランプの下で赤く光るイチゴを買う客はいない。

 市場の係員の李さんは「テナントのほとんどが帰ってしまったので、われわれの仕事は、店主が留守の間、市場の衛生を守ることと防火」と言う。「イチゴは冬のフルーツ。閉鎖が長引き、商品が悪くなれば捨てるしかありません。ある人は、この難関を乗り切れるように政府が一定の補助を出してくれればありがたいと言っている」と説明した。

 市場付近の住民は「家はめったに出ないね。生活必需品を買う時には出掛けるが、マスクは必ずするようにしているよ。家に帰ったら、洗剤で3分間は手を洗うようにしている。外界で伝えられているほど怖い状況ではない。大部分の人は、ストレスは感じつつも淡々と過ごしている」と話した。(c)CNS/JCM/AFPBB News