【2月24日 AFP】ジンバブエの村に住むドゥミサニ・クマロ(Dumisani Khumalo)さん(45)は、れんが造りの自宅近くの木陰に置いた椅子に向かって、痛みをこらえながら恐る恐る歩いて行く。クロマさんは数日前水牛に襲われたが、幸いなことに再び歩けるようになった。

 ジンバブエでは2019年に野生動物に襲われて死亡した人の数は36人と、前年比20%増となった。また当局の記録によると、野生動物による人間の襲撃は昨年は311件で、前年の195件から大幅に増加した。

 野生動物による襲撃は壊滅的な干ばつが原因だ。食べ物や水を求め人里に出てきて人間に遭遇し、襲うという。国立公園の広報担当者ティナシェ・ファラウォ(Tinashe Farawo)さんは、「人間や家畜を襲ったり、作物を荒らしたりすることもある」と話す。

 最も犠牲者が多いのはゾウだが、カバや水牛、ライオン、ハイエナ、ワニに襲われて死んだ人もいる。

 有名なビクトリアの滝(Victoria Falls)の隣に位置するワンゲ国立公園(Hwange National Park)はジンバブエ最大の野生動物保護区だが、柵は設置されていない。ファラウォさんによると、森で水や食べ物が少なくなると、野生動物が緩衝地帯を越えてしまうという。

■飢えた野生動物

 クロマさんは、水牛に襲われた時のことを鮮明に覚えている。

 食糧支援の登録に行くため村の近くの森を歩いていると突然イヌがほえ始め、水牛が茂みから現れ体当たりをしてきた。水牛はクロマさんの胸を打ち、地面に放り投げると、角で性器を引きちぎろうとしてきたという。クロマさんは水牛の脚をつかみ、目を蹴飛ばすと、水牛は走り去った。

 ジンバブエ北西部の乾燥地帯に住む村人は、飢えた野生動物に襲われることがしばしばある。昨年は3か月で200頭を超えるゾウが餓死している。

 ワンゲの地元自治体の議長を務めるフィンディレ・ヌクベ(Phindile Ncube)氏は、クロマさんが水牛に襲撃された時、違法な狩りを行っていた可能性があると指摘した。だが、野生動物に襲われ死亡する人は増えており、干ばつによって事態は悪化していると認める。「森で飲み水がなくなり…水を求め人里に出てきて人間に出くわす」

 ヌクベ氏によると、数週間前には水を探していたゾウが、民家の井戸でウシ2頭を殺したという。(c)AFP/Ish MAFUNDIKWA