■「むち打ち執行官」への道

 執行官になることに同意した宗教警察官の女性8人は、むち打ちの適切な技術や、受刑者のけがの程度を抑える方法を学んだ。

 AFPは女性執行官への取材を求めたが、安全上の理由からアチェ州当局に断られた。執行官たちは身元を隠すため、布製の覆面と大きめの茶色い制服を着用している。

 宗教警察の捜査主任は、「われわれは執行官が体力を維持できるようトレーニングを行い、適切なむち打ちの方法を教えている」と述べた。さらにむち打ちの「こつ」は同胞をたたくという精神的ハードルを乗り越えることであり、神と向かい合うことが必要だと説明した。

 また「われわれが行っていることは、執行官が自分の役割についてよりよく理解するための一種の教化だ。神の法を犯す者への慈悲は必要ない」と述べた。

 アチェ州当局は公共の場や建物でのパトロールや、告発を受けての監視活動に平行して、むち打ち刑が犯罪を抑止していると主張する。

 むち打ちの痛みは強烈で、失神したり病院に搬送されたりする受刑者もいる。同性愛者の性行為や未成年者との婚前交際などの最も重い罪に対しては、150回ものむち打ち刑が言い渡されることもある。

 ある住民は、「アチェでのイスラム法(の適用)はまだ甘い」「むち打ちだけでなく、石打ちのようなより厳しい罰が必要だ。不倫した者は石打ち100回の刑に処されるべきだ」と述べた。(c)AFP/Haeril HALIM