【1月29日 AFP】覆面姿の女性執行官が緊張した様子で近づき、所定の位置に着くと、女性受刑者の背中に連続してむちを下ろした。公開むち打ち刑が行われているインドネシア・スマトラ(Sumatra)島のアチェ(Aceh)州で結成された初の女性執行部隊だ。

 むちで打たれた未婚の女性は、ホテルの一室に男性といるところを捕らえられた。イスラム教徒人口が世界最多のインドネシアの中でも唯一、イスラム法(シャリア)が施行されているアチェ州では、婚前交渉は道徳に反する犯罪とされている。

 州都バンダアチェ(Banda Aceh)宗教警察の捜査主任は、今回担当した女性執行官について、「よくやったと思う。彼女の腕は良い」とAFPに語った。

 むち打ち刑をめぐっては人権活動家らが反対し、メディアや政治家たちの間で激しい論争が展開されている。

 ジョコ・ウィドド(Joko Widodo)大統領も公開むち打ち刑の廃止を求めているが、アチェ州で起きていることについての発言力はほとんどない。

 アチェ州では婚前交渉の他、賭博や不倫、飲酒、同性愛者間の性行為などが犯罪とみなされ、刑罰として一般的に公開むち打ち刑が適用されるが、刑の執行はこれまで男性が行ってきた。

 専門家によるとインターネットへのアクセス増加とグローバル化によって、地元の文化的・宗教的規範との衝突が拡大しており、婚前交渉や公共の場での愛情表現で犯罪に問われる女性が増えているという。

 これに伴ってむち打ち刑の執行数も増加しており、アチェ州は現在、イスラム法に従って、女性犯罪者に対するむち打ち刑を担当する女性執行官を求めている。

 しかし、女性たちに執行官になろうと思わせるのは簡単ではなく、初の女性執行部隊を結成するまでには何年もかかったという。