【1月29日 AFP】ドイツの首都ベルリンにある「シティー・ホステル(City Hostel)」は一見、当たり障りのない宿泊施設に見えるだろう。だが今、北朝鮮への制裁をめぐる法廷争いによって閉鎖に追い込まれようとしている。

 ベルリンをかつて東西に隔てていた検問所「チェックポイント・チャーリー(Checkpoint Charlie)」の跡地からわずかの所にあるこのホステルは、バックパッカーたちに安い値段で宿を提供している。

 しかしドイツ当局は、このホステルが金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-un)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮独裁政権の資金源になっている疑いがあるとしてこの数年間、閉鎖を要求してきた。

 2007年に開業したこのホステルは、EGIというトルコの企業が所有しており、北朝鮮大使館の敷地内に建てられている。

 ベルリンの行政裁判所は28日、EGIが自治体当局の閉鎖命令に対して起こした訴えを却下した。2017年にEUが採択した国連安保理決議に基づく対北朝鮮制裁の実施に関する指令に、ホステル側が違反しているという見解だ。裁判所はホステルの閉鎖を命じたが、EGIには控訴する権利があるとも付け加えた。

 旧ソ連風の5階建てのホステルは北朝鮮大使館、つまり北朝鮮政府に毎月3万8000ユーロ(約460万円)程度を支払っていたと批判されている。

 ベルリンでは近年宿泊料金が急騰しているが、シティー・ホステルは1部屋の1泊料金がわずか17ユーロ(約2000円)だ。

 大使館の敷地は、共産主義国だった旧東ドイツ時代の1960年代に北朝鮮政府が取得し、自国外交官の親族らをもてなすために使った。

 地元当局は2017年、ホステルに対して行動を起こすことを決定。アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)政権の後押しを受け、北朝鮮の核開発計画をめぐり国際社会が科した制裁に違反しているとして、ホステルの閉鎖に乗り出した。

 2016年の国連安保理決議によれば、北朝鮮は国外での活動において「外交および領事館業務のみに制限」されている。

 ドイツ外務省によると「大使館の敷地内、または大使館関連の敷地では、いかなる商業目的の活動も禁止」されているが、ホステルを経営するトルコ企業EGIはこれに反論し、現在まで営業を続けてきた。(c)AFP/Mathieu FOULKES