見れば見るほど、違いは歴然としていた。隣のパーキング・スペースにスタンダードなR35型GT-Rがちょうど駐まっていたのも、それを手助けしてくれた。目の前にあるのは"日産GT-R 50 byイタルデザイン"。その名から誤解を受けやすいが、2018年6月にはじめて公開され、2020年後半から納車を開始するこの50台限定のGT-Rは、内外のデザインはロンドンにある日産のデザイン・センターと日産デザイン・アメリカが手がけている。イタリアのカロッツェリア、イタルデザインが担当するのは開発、設計、そして生産である。

イタリアで1台ずつ手造り

GT-R 50 byイタルデザインは、ここ日本では輸入車の扱いとなる。600psを発揮するGT-Rニスモをベースに720psまで引き上げられた3.8ℓV8ターボ・ユニットや、それにあわせて強化されたドライブトレーンが組み込まれた状態で日本からイタリアへ渡り、イタルデザインで1台あたり8週間かけてほぼハンドビルドされた後、世界中へデリバリーされる。価格は99万ユーロ(1€=122円換算で1億2078万円。税別・オプション含まず)。GT-Rニスモは2420万円だから、約5倍のプライスだ。

単体で見ているとまず分からないが、注目はルーフ。なんと54㎜も低い。当然モノコックも違えばフロント・ガラスをはじめガラス類は違うし、外板もカーボンが主体となる。全長と全幅はそれぞれ+94㎜と+97㎜。リア・セクションは巨大な昇降式のウイングとの兼ね合いで通常のGT-Rのようにトランクは独立しておらず、ハッチバックとなる。車体横の"GT-R"エンブレムも隣のR35型GT-Rと違い、Rの書体が柔らかいR34時代までのものだ。

「なぜならこれは50周年を祝うクルマだからだよ」と笑みを浮かべるのは日産のOEM/パートナーシップ/スポーツ・ディレクターのボブ・レイシュリーさん。所々に傷があるのでもしやと思って聞くと、グッドウッド、モントレー、N.Y.とあちこちですでにデモやテストを兼ねて1万㎞以上も走破していた。車体剛性をはじめ、性能や保証に関してはGT-Rニスモと同等を担保するという。

ボブ・レイシュリーさんは日産に1995年に入社。もしこのGT-Rを自分好みに仕立てるなら? という質問に「モータースポーツで一番好きなのはル・マン。だからボディの上が赤、下が黒でグラデーションだった日産R390のカラーリングはどうだろう。ゼッケン・ナンバーは日産に入った年の"95"かな」と答えた。
1972年の東京ショーで展示されたケンメリGT-Rがモチーフのカラーリングは顧客より注文がありデザインを終えたばかりだという。

気になる人はお急ぎを

ペトロール・ヘッドでありパフォーマンス・ナッツ(性能第一主義)であることを自ら認めているボブさん。GT-Rについて話し出すとなかなか止まらない。彼こそ日産の、GT-Rの生き字引。まさに過去と現代を繋ぐ伝道師なのだ。 

ボブさんはiPadとVRゴーグルを手に世界中の未来のオーナーを訪ね、一台一台仕様を決定しているという。先日展示されたオートサロンでもオーダーがあったそうだが、50台の枠はまだ残っているようだ。日本での取り扱いはロータスの輸入元であるエルシーアイの関連会社、エスシーアイが行う。詳細はhttps://gt-r50.nissanまで。

文=上田純一郎 (ENGINE編集部) 写真=山田真人 協力=日産自動車/エスシーアイ