【1月27日 AFP】ドイツのハイコ・マース(Heiko Maas)外相は26日、反ユダヤ主義の台頭を阻止するための対策を早急に取らなければ、同国からのユダヤ人の「大脱出」が起きる恐れがあると警鐘を鳴らした。

 ニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)のアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所の解放から75年を迎える前日発売号への寄稿の中で、マース氏は、現実とオンラインで反ユダヤ主義的な言動や攻撃が「日常茶飯事」と化していると指摘。

 ドイツは長きにわたりナチス・ドイツ(Nazi)の過去と向き合う努力をしてきたにもかかわらず、国内のユダヤ人のおよそ2人に1人が国外移住を考えたことがあるという。

 マース氏は、「そのような考えが苦い現実となり、ユダヤ人のドイツからの大脱出が起きることのないよう早急に対策を取らなければならない」と主張した。

 マース氏によると、ドイツは反ユダヤ的行為に対する法定刑厳格化を推進し、より多くの欧州連合(EU)加盟諸国がホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)の否定を犯罪化するよう求めていく。ホロコーストの否定は現在、ドイツやベルギー、イタリアなどEU加盟十数か国で違法とされている。

 さらに、ソーシャルメディア上での反ユダヤ主義的な憎悪表現(ヘイトスピーチ)と偽情報への対策も強化していくという。

 マース氏は、「欧州の若者の3分の1は、ホロコーストについてよく分かっていない」とする調査結果があるとした上で、ナチス・ドイツがユダヤ人600万人を殺害した第2次世界大戦(World War II)の恐怖について、若者が学ぶことの重要性も強調した。

 英調査会社ユーガブ(YouGov)が26日に公表した世論調査でも、ドイツ人の56%が、学校の社会科見学でのアウシュビッツ訪問を義務化すべきと回答した。(c)AFP